2001年10月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞


花材/風船柳、モンステラ、アレカ椰子、リゴリス、リンドウ

ポイント 奇異な実をつける風船柳。中から綿状のものが出てくることから風船唐綿とも呼ぶ。柔らかい曲線に風船を浮かばせるイメージで素材配分を考え、モンステラの面で引き締めます。黄色、緑の濃淡に深い色合いを求めます。



花材/コスモス、オクラ

ポイント コスモスも改良が重ねられて今では早咲き種が出回り、秋を待たずして開花する種類が目立つようになった。しかし鮮やかな発色はバラ同様朝晩の温度差が大きくなる秋がよく、青空に映える淡い色は格別。集合させる扱いであっても一輪一輪の表情を捉えること。


避けがたい偶然の色分け

  アメリカの象徴であるニューヨークマンハッタンにそびえる双子の超高層ビルに日本時間9月11日午後10時、航空機2機が相次いで突入!。えぐられたビルからは噴煙が立ちのぼり、炎を避けるため割れた窓から身を乗り出す姿や、各階事務所にある書類などが舞い散るなど、あたり一体は異様な光景と化した。さらに、想像もしなかった最悪事態が起こったのは約1時間後、まるでスロー映画を見ているかのように上部から崩れ落ちる映像までも克明に映しだし、世界を震撼させたのである。 
 この現実離れした同時多発テロの展開に、画面の前の者でさえただ呆然と見入るだけだったのだから現場の人はそれこそ何がおこっているのかまったく想像さえも出来なかったに違いない。まるで砂で作られていたかのように、権力、経済の象徴はもろくも崩れ落ち、多くの尊い命と共に双子巨大ビルは姿を消した。
 即刻、アメリカはこの未曽有テロへの戦線布告?。余りにも残酷かつ多くの命を奪った今回の実行犯、とりわけイスラム原理主義指導者オサマ・ビンラディンには、目には目をの立場を明確にし、各国を巻き込んだ現実的な戦争に。
 無差別に罪もない多くの一般人の命を一瞬にして呑み込んでしまったテロ行為。当然犯人に対する怒りは最大級のものであり処罰は当然のこと。人はこの反撃を「聖戦」と解釈するのだろうが、かなり難しい選択であるのには違いない。
 今、偶然にもこの地獄絵に巻き込まれてしまった人々を思う時「運命」と片付けてしまうには余りにも無責任であり、報復を躊躇する発言もまた…。しかし、いつも思う。このような予測もしていなかった、偶然の恐い出来事が隣あわせにある現代。運命ってなんだろう、夢ってなんだろうと。偶然という一瞬に、どのように人は関わっていけばいいのだろう。その時、そこに居合わせなければ、ほんの少し時間をずらしていれば…。「もしも…」と言う思いは、どんなに時が過ぎても、拭っても拭い切れないものであろう。巻き込まれた本人のみならず、その人に関わる全ての人の運命にまで繋がっていく。 
 人は、自らの意志ではどうする事も出来ない運命と言う大きな波に、常に関わりながら生きている。普段何気なくすれ違って行く人々。ほんの少しのきっかけで、見ず知らずの者同志の間に、様々な語らいや心の疎通が生じる。時には、その会話の中にホッと心温まる思いをする事もあり、当然その反対に思い出すのも嫌と言う時間を過す事もある。しかし、そのどんな出会いも確かに現実であり、それによって、自分の心の中に何らかの影響が残っているものである。偶然の出会いは、それが二度と出会う事のないただ一度の関係であったとしても…。だからこそ、今を生きる温かなふれあいを心がけたいもの。

                              華道専慶流 西阪慶眞


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