ご縁にありがとう(コラム11)

華道専慶流いけばな・西阪慶眞




蔓梅もどき 専慶流
花材/蔓梅もどき、松、レザーファン、クレマチス

はな/西阪慶眞作
花器/深鉢現代花器



 上記タイトルを見るだけで「古くさい」と捉える人は少なくありません。しかしあえて私達は頑固に「出会い」にこだわり続けているのです。それは何故でしょう。
 西洋の父性文化、東洋の母性文化と大別されるように、外観だけを格好良く見せるデザイン手法ではなく、むしろその内に秘める心、内から放つ美を追い求めてきたのでした。
 精いっぱい生き抜いてきた一輪の花に善し悪しなど区別はつけられません。とは云ってもややもすると外観の格好良さに目をうばわれたり、生けばえする枝振りに流され、知らず知らずの内に良否をつけてしまいがち。
 人と人、人と花、人と環境、時折々の出会いはすべて縁です。
 自分の手元に来た素材にまず感謝をしましよう。するといけ手と素材が本音でぶつかりあえるのです。昨年コスモスを生けたとしても、今ここにある一本のコスモスは、この一本だけが持つ姿形です。すべてのわだかまりや固定概念を捨てた私と一本の真剣な語らいが始まります。同じ方向からだけではなく、すべての角度を注意深く眺めます。表裏もあれば、側面もあります。裏側だからと云って軽視しません。それはすべての角度に、秘められた美が隠れているからです。
 そおなんです、縁あってせっかく手元に来た素材。ぞんざいに扱うわけにはいきません。時間をかけて、会話をし、どの表情、姿が他の素材との出会いにぴったり呼吸するのかを探るのです。そのためにはまず素材に惚れこむこと。惚れた相手には気分も解放され、それまで想像もしなかった美を見いだすことも出てくるからです。
 縁を大切に、わだかまりのない素直な心を極める「道」、それが華道、いけばなです。花を通じ様々なことを私達は学んでいるのです。



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