花材/西洋オダマキ(マッカナジャイアンツ)、アーテチョークの葉
はな/西阪慶眞作
街のあちらこちらに出現したコンビニエンスストアー。日用品に加えて食料品、雑誌、ビデオテープ、CDなど、日常必需品はほとんど揃う。最近ではカラーコピー機も設置、その他旅行の予約、各種チケットの購入、さらには公共料金の払込サービスまで加わり、利用者層も厚くなっている。 私達の食生活に変化をもたらしたのはインスタント食品の普及だけでなくコンビニの乱立が拍車をかけ、レトルトの利便さと引き替えに、当然にして食文化の低下を押し進めている。私たちが慣れ親しんだおふくろの味、家庭の味、ふるさとの味が音をたてて崩れているという。 どの家庭にも独特のお惣菜、おばんざいに工夫がこらされ、これらを囲みながら家族だんらんに花を咲かせたものであり、そこに家族の絆や感謝の念を自然発生的に育んでいたのである。 考えてみれば食文化にしろいけばなにせよ、継続的な研究と磨きをかけた膨大な時間と知恵の蓄積。それは地味な、努力を惜しまない陰の勤勉さが支えてきた。季節に合わせた料理は舌を満足させるだけではなく目を楽しませる色や形にも工夫が、ときには香りにまで配慮した盛り付けがされ、食欲をそそる。綺麗に掃き清められた客間、心洗われるような涼やかないけばな…。こうしたさりげない、それでいてこだわりの行為は日本人の誇りでもあり、家の美学でもあった。 癒しが取り沙汰され、心のケアが最大課題となっている。利便、簡略、合理化が産み落とした歪みの一部である。介護法の制定や介護士の養成もいいが、すさんだ心を育む土壌を形成している現在の生活環境が最も大きな問題であろう。それは意外にもひとり一人の家庭に端を発していると見るのは決して言い過ぎではないと思うのだが。 「時の流れとともに変わるもの、変えたいもの、変えてはいけないもの」。この選択肢をはき違えないよう民族の発展、文化高揚につなげたいものである。
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