いけ手と花の会話(コラム8)

華道専慶流いけばな・西阪慶眞


花なす 専慶流
花材/花なす、パンパス、ひまわりニ種、雁足

 

ガーディニングが誌上を飾り、若者にも人気が集まっている。

 ベランダや裏庭をカラフルな色でうめつくそうと、園芸店で見つけてきたとっておきの苗や種を傍に、すでに頭のなかは立派に咲き誇った光景を描きながら、手にするスコップ作業も軽やかとなる。

 準備する最も大切なのが「用土」。街中ではコンクリートで塗り固められていることから土も園芸店で購入する事になるが、種類が多数あって戸惑う。あらかじめ肥料を混ぜたものや、アルカリ、酸性の区別があったり、重い土、軽い土、粒子の大きさなど多種多様。

 肥料や殺虫剤、薬剤選びはさらに難しい。結局、店員の奨めに従ったり、セットになった商品を購入することになる。説明書に従えばまるでプラモデル感覚で「失敗なく花を咲かせる」ノウハウがパックされ、手軽だという。

 パソコンに動物を飼育するソフトがあるが、今やガーディニングも同一レベルで捉えていて、決められた手順に水や餌をやる、その手順の中に夢を描いているのだろう。
確かにこうしたガーディニングが、多忙でストレス溜まる時代にほっと一息入れる気分転換の対象となればそれにこしたことはないだろう。でも私はあえて提案したい。育てるのはゲームでもなければ、お金で買うものもでなく、心が最大の肥料となる事を知ってほしいのです。子育てとまったく同様、親の心がそのまま子供に反映するのです。水、肥料のやり過ぎなど過保護は良い結果をまねかないのは当然で、日々の推移を見守り、状況を正確につかむ事が大切なのです。

  植物に語りかけてやるとそれに応えてくれると云いますが、最近、植物も人間を識別していることが科学的にも証明されたそうです。そう云えばいけばなで使う切り花も同様ではないでしょうか。いけ手が心込めて接してやれば水揚げもよく、日持ちするように感じるのは私だけではありません。

 いけばなもガーディニングも格好よさだけでは本質は掴めないのです。上記作例の花材はすべて私が栽培したもの。手塩にかけた花材をいける醍醐味を是非とも体験してもらいたい。いけている時、込み上げる熱いものを体感するでしょう。じつはその込み上げる心の高まりが心身の健康にも結びついているのです。




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