本紙「花模様」を発行したのは98年の6月。コンピュータ(Macintosh)で作成したものをプリンター(EPSON)で出力したもの。以前は自宅にオフセット印刷機を設置し、手間ひまかけて印刷していたのだが、思いきってコンピュータ導入に踏みきった。思い返せば印刷分野も随分変わったものである。
75年頃、長らく鉄筆を使って手書きしていたガリ版に代え、ようやく和文タイプライターを導入。活字で紙面を飾る事が出来た第一歩だった事が懐かしい。逆字になった字母を一字一字打つのだが、2500以上もある活字の中から目当ての字母を探し出すのは容易ではない。大きさを変えるのはトレーを載せ替えて行うが、鉛の固まりのためこれが結構重い。ゴシック、明朝、級数等を替える度にこの作業をくりかえすのだ。今思えば気の長い作業だった。
そして86年頃ようやくワープロが実用的となって導入。ワープロと云っても細かいレイアウトはしてくれないので「切り張り」の手作業で紙面レイアウトをしたものである。それでもタイプと異なり修正が自由自在、かさばる活字(字母)の保管や入れ替えも必要でなくなったことは画期的な出来事であり、作業は飛躍的にスピードアップした。ただ、写真印刷となると大掛かりな設備と時間、テクニックを要することから一般には立ち入る事が出来ない専門分野として一線が引かれていた。だが私はこれにもあえて挑戦。6畳の暗室を手作りで建て、そこに製版カメラや現像機を据え小さな印刷所並の作業をこなしたのである。
ところが、95年頃からコンピュータに接続する高性能なプリンターが出現。以来印刷の概念が一変、これまで不可能と云われていたカラー印刷が自宅、オフィスで簡単に出来るようになった。勿論写真も「網撮り」と云う特殊な行程を踏まず、いとも簡単にやってのける。これを機にコンピュータの普及率は飛躍的に伸び、一般家庭に受けいれられるようになったのである。並行してインターネットと云う次世代メディアにも拡大、いよいよ情報化社会は企業だけでなく個人にまで及ぶところとなったのである。
一家に数台も珍しくない急速な普及率を見せるコンピュータ時代、私達はどのように捉え、考え、付き合えばいいのか、早急な対応が求められている。
言える事は「使える事は一般常識」。機械に弱いからと避けるのではなく、今では使えて当然の時代。その上でインターネットから溢れる世界の情報をどのように暮らしに活かすか、各自に問われている事を知らなければいけないのです。
華道専慶流 西阪慶眞
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