不安な世相とはいえ新しい年を迎え、心あらたまる大きな節に違いはない。孫を数人持つ身となれば、数え切れないほどの年数を数え、その都度様々な思いを胸に初日の出に手を合わせたことです。
平成14年は壬午(みずのえうま)の年。この呼び方は中国で古くから使われていた日を数える尺度で、十干十二支。十干(じつかん)とは甲乙丙丁戊己庚辛壬癸で、これをすでに承知の鼠丑虎兎…の十二支を組み合わせた60通りを使って日を数えたり、後には年号や月を呼ぶようになり、今年は干支番号19番にあたるという。壬は十干の第九番で「水の兄(え)」の意。午は十二支の七番目、正午から二時までを表し、方位は南を表すという。これらが後に迷信的干支に当てはめられて今日に至っているのだが、これもまた人が生きるための励みにする知恵だったのだろう。
たしかに、人は弱いもので、平々凡々とは暮らしにくい。とくにこの時世では心もぐらつきストレス倍増なんてことも日常的となったが、そんなときには迷信とわかっていてもこれらに「あやかる」のも一方法。暗い世相にむかって後ろ足で力強く蹴り上げるほどの「馬力」を発揮し、明るい方向の南、南へと走りぬけたいもの。
物質文明にあぐらをかき、心の研鑽をおろそかにしたツケが今に至ってる事を深刻に受け止め、心にゆとりを取り戻さなければ益々大きな穴に引きずり込まれることになるのは疑う余地もありません。生きる=お金ではなく、心の豊かさこそ馬力であり、何物にも代え難いエネルギーとなりえるのでしょう。
アルミ鍋に入った即席うどん、自販機で売られる缶ジュース…使い捨てではなく、再利用出来る新容器開発など、モノを大切にする心の再確認こそ、地球を救う第一歩。生きるものすべての生活構造をもう一度見直し、暮らしそのものの「構造改革」にも是非とも着手したいものです。
今月のいけばなはお正月にいけた花がとても長持ちすることから、形を変えて「いけなおす」のが重要です。○葉を付けて使った南天は実だけにし、松は低く扱い、葉牡丹は葉を減らす。千両はマッス扱いとするなど構成要素を変える。○蘭や草花は水切りして生気を与え、組み合わせを替える。例えば生花様式の花は現代花や投入にするなど花器も一新するのがポイントで、見違えるほど新鮮に生まれ変わるものです。
花をいけるのは必ずしも花器でなくていいのです。台所周りの様々な容器、雑器、或いは布や紙等を利用する事も考えられます。
華道専慶流 西阪慶眞