(水芭蕉・御在所岳)
IKEBANAテラピー
混沌とした現代社会の中で、私達の脳は異常に興奮し、その結果、精神不安に陥っている人が多くなっていると云われています。アロマテラピーと云う植物の香りを嗅ぐことで脳の働きを正常化させようとする試みが最近ブームになっているように、心の安定を図る策がクローズアップされているのは承知のところ。
中でも科学的に注目されているのが、脳波のひとつであるアルファー波。これは大脳の働きに伴って発生する脳電流のことであり、心・身体にとても良い影響をもたらすと云うことで、今、様々な方面から解明、実証がなされているのです。
脳波がアルファー波になるとβ-エンドルフィンが脳内に分泌される。実はこの物質がカギを握っているのです。β-エンドルフィンにはストレスを低減、解消させる効果があったり、脳を活性化させる。または体の免疫力を高め、病気を予防する効果があると云うのです。したがって、脳波をアルファー波に保つ事が出来ると「ストレスが解消出来る」「集中力や記憶力の向上が期待出来る」「体に良い」など、健康維持にもつながると云う訳です。
では、アルファー波はどんな時に発生するのでしょう。一般に、のほほんとしたリラックス状態、すなわち心が落ち着いている状態時に出ると云われています。同じ姿勢での連続した仕事や、ハードに体を動かしたり、心配事、イライラなどの緊張状態では波形の細かいベータ波に変わり、精神不安に陥り易いと云うのです。しかし、同じ緊張をしていても何かに没頭して脳の活動が調和集中している状態時ではアルファー波が出ているのです。すなわち、いくらハードな仕事であっても、本人が乗り気で気分良くやっていれば、心の状態はとてもリラックスしていると云えるのです。ノーベル賞受賞科学者の90%以上の人がのんびり寛いでいるときに何となくヒントが湧き出てきたと云います。つまり、何かに集中することが快感として受け止められるか否かもキーポイントのひとつといえるのです。
また、アルファー波は右脳を使っている時の方が良く出ていることが解っています。右脳は、非言語性、感覚性、空間性、音楽・絵画性、美意識などをつかさどる脳。一方、左脳は数学的、論理的、言語的な機能を持つ脳といわれています。
平たく云えば、いけばなは素材を手に様々なイメージを描きますが、これはそのまま右脳を活発化させ、アルファー波を出させ、β-エンドルフィンの分泌を促しているのです。また、神経の興奮伝達物質として働くアセチルコリンがあるが、花を手にするだけでこの物質の分泌が盛んになり、欲求・本能・自律神経などの働きとその制御を行う「海馬」に入り込んで脳を活性化させる事も解っているようです。
近い将来、いけばなもIKEBANAセラピーと云われて、精神、脳医学にも取り入れられる日が来るのかも知れませんね。
華道専慶流 西阪慶眞