花模様11月2003年11月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞      

西阪慶眞作・ストレチア、ソリダスター

花材/ストレチア、青ドラセナ、ソリダスター、バンダ、白色アンスリューム  花器/唐金花器

ポイント ソリダスターはソリダゴ属(セイタカアワダチソウの仲間)の一種と、アスター属のテリアツバギクの交配種で、菊科の属間雑種。栽培方によっては黄色い花が密集していて重く感じることがありますが、、軽やかな花姿が望ましく、柔らかい雰囲気に捉えるといいでしょう。生花には添扱いに。






西阪慶眞作・寒桜、寒菊、エノコログサ

花材/寒桜、寒菊エノコログサ 花器/横長花器

ポイント 寒桜は山桜の一種で、かなりの高木になる。花はやや早咲きで3月初旬なのだが、11月にも一部の花を咲かせるので四季咲き種とも云えるのでは。花期が長いため爛漫ではなく、まばらに咲かせる。その控えめな咲き方が魅力で、扱いも春の桜と一線をひき、やや控え目な捉え方、風情を楽しむいけ方がいい。ここでは冬に向かう季節感に焦点をしぼり、エノコログサ、寒菊を組み合わせ、おおらかな構成でまとめている。真っ直ぐな幹は少し撓めを効かせた緩やかな曲を作り、広がりある空間創りが大切。

寒菊は野生の趣を表出させるため、高低差を大きい目にとるといいでしょう。開花を低く、蕾を長く配すことで、伸びやかななかにもキリッと引き締まった見せ方が出来るのです。

最後にエノコログサの穂の向きに表情をもたせて少し長い目に中央部分に添えて完成です。


西阪慶眞撮影・光悦寺の山門 光悦寺にて

輝け!素顔の化粧

 秋本番、自然は野山を様々な色模様に染めていきます。紅葉は朝晩の温度差で鮮やかさが異なると云われますが、どうやらそれだけではなく、空気の澄み具合や湿度、高度差によっても随分変わるようです。京都は葉の小さな「いろはもみじ」が有名で、微妙に変化する深い色合いの繊細さに人々は心ひかれます。それとは異なり青森の奥入瀬渓流のそれは一枚一枚の感動ではなく周囲を錦織に染める際だつ鮮やかさにまず圧倒されます。桁違いのスケールの大きさと開放感、大自然の造型美に誰もが悩殺されること間違いありません。
 昨年は京都洛北の鷹峯方面に出かけましたが木漏れ日に輝く落ち葉と杉苔の背景がかもし出す絶妙なコントラストは時間を忘れて自分を見つめさせてくれる深幽の世界だった事を思い出します。
 植物は様々に化粧をし、表情を変えます。京都東福寺には沢山の紅葉が植えられていますが、鮮やかに色を放ち、一枚一枚の葉を落とし、そしてまた若葉へと輪廻する様が人生の無情に似ている事から、多くを栽植したと云われています。
 新芽の頃は幼年期。若葉はさしづめ青年期で、葉を十分に茂らせて幹を太らせます。環境が厳しければ厳しいほど枝葉はしまる。そして実をつけ(壮年期)、いよいよ紅葉を迎える、熟年期です。長いようで短い、短いようで長い人生には様々な苦難や岐路が待ち受けるものです。とくに緑多い時期には害虫も多く、不測の自然災害も。この苦境をいかに乗り越えるかが熟年期の輝きを大きく左右させるのです。
 年輪の重み、時間をかけたものの美しさには格別な趣きがあるものです。しかし、長い間にはマイナス面を植え付けられたり、中傷に押しつぶされそうになる事もしばしばです。この間、ちょっぴり微笑むだけで生きる事が、より楽しくなれる策や、気分転換の仕方など様々な術も身につけるのです。このようにして貯えた学びを栄養源に益々磨きをかける…。私達の化粧は、生涯をかけて自分色を創り出す人生。上辺にペンキを塗るのではなく、長い時間をかけて磨きあげるのは、日本人としての資質に則しているのでしょう。
 私もそろそろ初秋を迎える頃になりましたが、気取らない素顔、年輪の重みが少しでも増せばと、今なお修行の身である事は云うまでもありません。
 百歳現役の熟年者が増加しているそうです。先日は踊りの師匠が、その前は銀座の女將がテレビで紹介されていました。実に見事な花であり、散花?を楽しんでおられる姿はまさに芳醇素顔の美しさでありました。
 メイクは、その微笑みのためのとっておきの魔法の小道具でしょうが、心の化粧は的を得た年輪を重ねる以外にないのでしょう。自分のための化粧に一日たりとも休んでなんかいられません。

                              専慶流いけばな真樹会主宰 西阪慶眞


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