2004年8月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞

いけばな<プロティア>

花材/サンキライ、プロティア、
      スチールグラス、ひまわり

昨年、阪神タイガース優勝を祈願して作陶されたやや大振りの花器である。器の感じはかなり強く、花はマッス扱いとして、器と花が一体化する力強さを狙った。また、花の塊だけでは動きが出ないため、サンキライは左に、右前方には束ねたスチールグラスでアンバランスな動きを捉えています。



いけばな<栗>

花材/芝栗、デンファーレ、ひまわり、セローム

上の作品と同じ花器を向きを変えて使っています。器の模様をシンメトリーに見て、反面、花はアンバランスな左に流した構成で栗の茎の動きと実の表情を捉えています。上記同様、花器が大きく、重く感じますので、ひまわりをマッス扱いにすることで、器と花の連絡をとっています。


 蓮/琵琶湖、烏丸半島にて

はなの表情「自由花」

 空梅雨で水不足を心配していた矢先に越後、福井地方では集中豪雨、大惨事となった。テレビ画像からでしか推測判断する事はできないが、遭遇された方々の精神的ショックははかり知れないものがある。忘れたころに天災は来ると云われるが、自然猛威の前に成すすべがないのが現状なのだろうか。巨大竜巻きも無縁とは言えない最近の気象変化は、私達にもう一つの試練と教訓を投げかけているように思える。
 阪神淡路大地震から数年経ち、倒壊した阪神高速道路もすでに復旧、見事に立ち直っている。しかしそれは外見だけで、遭遇された人々の心の傷を癒すまでにはいたっていない。東京の地下街に大量の水が流れ込んだらどうなるのだろう?。巨大地震が発生したり停電、火災が起きたら…。構造物には様々な対策が施されているのは言うまでもない。しかしその予測を超えるのが自然猛威。せめて日頃から避難のシュミレーションだけは個々に捉え、様々に対応した「自己防衛」が必要なのだろう。とりわけ高齢者など弱者への対策は見すごせない。
 さて、いけばなを教えていて難しく感じるのは「自由」の表現。自由花と呼ばれる個性を尊重したいけばなは、基本的には制約もなく、絵画などと同じように生け手の感性次第。だから、その人の「見る目」「捉える目」がカギとなる。また、絵画における絵の具の混ぜ方や色の出し方、筆の扱いなど、多くの基本テクニックを学ばないと自己表現が貧しくなるのと同じように、素材の見方、扱い方、技法など幅広い経験が問われる。加えて、いけばなの素材は数えきれないほどの植物を対象としている。しかも、枝ものでは春夏秋冬でその姿を変え、また、育った環境で素材の表情は一変する。だから、今手にした素材は二度と巡り会えないその時だけの形であり、冷静にその形や表情を適格に見い出し、表出するのです。素材の組み合わせを含めて「自由花」への課題は奥深い。
 作例の栗を例に考えてみよう。芝栗は8月中旬頃から9月初旬にかけて、秋到来を告げる素材として取り上げる。イガの大きさはピンポン球程度で、勿論葉も付いている。さて何に焦点を合わせるのか?やはり栗特有のイガであろう。そのためには大きな葉は邪魔になるので整理が必要となる。全部取り去るのか、あるいは一部残すのか、はたまた、虫喰い葉に表情を残すのかなどを検討する。次に、茎の表情も面白い。直線的なのか少し曲線を捉えるのか、ここでも狙いは異なってくる。また、イガを集合するのか、点在させるのかによっても訴える中身は異なってくる。そして組み合わせる素材や花器によって、どのような形態(フォルム)を持たせればいいのか…、自由花は制約がないだけに様々な迷いが生じる。ああでもない、こうでもないと枝を振り回し、結局、短くしすぎたり、全体の狙いがボケた散漫な作品とすることも多々経験するだろう。
 こうした失敗を避ける秘訣は、素材としっかり会話し、目の前の素材の個性や表情を十分把握する事。構想が練れるまでは絶対に枝は切らない事。もう一つは、自分を殺し、素材優先で捉える事である。格好よく見せようとするのでなく、素材の持つ表情そのものを生かせてあげる手伝いをする自分である事をしっかり理解しておく事なのです。

                               専慶流いけばな真樹会主宰 西阪慶眞


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