2005年7月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞
桧扇・いけばな専慶流
花材/ルリ玉アザミ、桧扇 花器/慶眞作造型花器

 花器は朱とグレーの2個の形を組み合わせた造型作品。蒸し暑い京の夏には欠かせない桧扇は葉の動きを捉え、面の構成に力強さをもとめます。るり玉アザミはすべて葉を取り去りすっきりした茎の線を印象的に。下垂した枝は折って使っていますが水揚げには問題ありません。

いける手法は投入に生ける感覚でいけますが、異なる点は、器に合わせてルリ玉を少し造形的に扱ったことです。形の変わった変形花器で試されると面白いでしょう

花材/花材/ひまわり二種、姫ガマ

 太陽を象徴する夏の花として欠かせないヒマワリ。その種類は多く、観賞用だけでなく、油料用、菓子用などもある。
切り花にも変革があり、最近はレモンイエロー系が増えている。
作例の赤褐色のひまわりは知人から頂戴したもので名前も不明だが、おそらくアメリカ産のようです。水揚げは良好で日持ちも十分で、まるで皆既日食を見ているようです。
ヒマワリ・いけばな専慶流

心開く井戸端会議

 ある職場の休憩室での風景…。休憩室と言う場所柄、人は限られた時間を思い思いに過ごし、日々の心模様次第で会話も様々である。ひっそりと静まりかえっている時もあれば、周囲はみんな職場仲間と言う事もあって些細な事で爆笑し、話しが盛り上がる時もある。先日もこんな話しに花が咲いたと言う。 
 片隅で始まった戦中戦後の昔懐かしい流行歌や歌手を知っているか否かの話しから、回顧の話しへと発展。発端は50歳半ばの人の「おくどさん」って知ってる?と言う一言から。土やレンガで作られた竈の事で、極端に言えば今でいうガス台。その「おくどさん」には 火の神様を敬い、火の災いから守ってもらう意味で壁にはお札が張られていたとか、お正月の餅つきには隅に塩が盛られ、大晦日の夜には火を落とし、お釜の中にお米を盛って、ろうそくを立てた…など、当時を振り返りながらの話しには地域性もあるのか、様々な話しが飛び出した。また、テレビを初めて見た日の衝撃的感動の模様や、カラーテレビが我が家にやって来た日、鏡台がいつの間にかドレッサーと呼ばれ、なんのことだか解らなかった事。食器棚を「みずや」と言うが、地方によっては炊事をする場所全体を指して「みずや」と言うなど等…やがて話は野山を走りまわり自然の中でどろんこになって思いっきり遊んだことや、「おやつ」の内容が、お菓子と言うより、今で言うおかずや、農作物などが代用品になっていたなど、どんどんエスカレート。当然話しの内容からそれぞれの年齢層が明らかになって行くのだが、話している誰もが生き生きとして見え、自分が生きてきた時間の流れを懐かしみながら自然と話しの輪は広がって行った。
 何も特別ではなく普通に生活してきただけの他愛のない話しの中でさえ、生活様式の変化や経済発展の様子がうかがえるが、何よりも過去の小さな一つの出来事を共有する事、隣り合って話す偶然が人と人を無理なく繋いで行く…そんな気がした。人はこうして何かを語り合いながら同じ時間を共有する事で穏やかな人間関係を作りあげて来たのである。我が国には「井戸端会議」なんて言う風習?があった。読んで字のごとく、当時は生活用水を地域にある共同の井戸から得ていたが、そこで水汲みや洗濯等をしながらする世間話である。思えば、身近な情報交換の場としては格好の環境だった様である。共同銭湯も同じ役割をはたしており、裸の会話を飛び交わして、近隣情報だけでなく、新しい知識をもそこから得ていたのである。
 しかし、最近では個人情報が闇売買されるという恐ろしい時代に入り、うかつに相手を信頼するととんでもない事件に巻き込まれかねない。各戸から表札が消え、近隣仲間であっても益々疎遠化が進み、反面、パソコンを使って「顔の見えない会話」に拍車がかかる。これが小学生にまで広がっていると云うから恐ろしい話である。正しい使い方を教えないで使用させている親や学校の責任は拭えないが、時代の移り変わりに親や教員がついて行けていないのも要因の一つ。今やパソコンや携帯は生活の一部にまで入り込んでいる時代。その文明器機を親が「知らない」では子供の教育も危ぶまれるというもの。上手に使って現代に合ったコミュニケーションをはかりたいものです。

                            専慶流いけばな真樹会主宰 西阪慶眞


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