「数読」と言う名を知らなくても、3×3のマスの固まりを更に3×3に並べた9×9マスのシンプルなパズルは、誰もが一度は目にしているのではないだろうか、今ブームとなっている。待合室では高齢者から子供まで、電車の中ではサラリーマンや学生が、レストランでは主婦達が…様々な場所で幅広い世代の人達が、同じ物に興味を持ち挑戦をしている。単純で、何処ででも鉛筆一本あれば挑戦可能。最近言われる脳の活性化にも役立つとか。このパズル、世界的な流行は、日本の「数読本」がニュージーランドのグールドと言う人によってイギリスの新聞社に持ち込まれた事が発端。2005年あたりからイギリスでは、日本語が起源の「SUDOKU」をタイトルに大流行になったとか。今回の我が国の流行は逆輸入になる。ちなみに、この流行によってイギリスでは鉛筆の売り上げが急激に増えたらしい。そもそもこのパズルは「ナンバープレース」と言う名でアメリカで考案された物を、日本で「数字は独身(数字が重ならないと言う意味)に限る」という紹介をした事が「数読」=SUDOKUと呼ばれる所以らしい。この小さなマス目のパズルが海外の新聞や雑誌の紙面に掲載され、多くの人がその単純でありながら難解でもある魅力に引き込まれ、世界中に広まっていったようである。
時間に追われ、慌ただしい日々の生活の中で、今更パズルなんて…と思いながら、実はちょっと気分転換と思った時に、私も鉛筆片手にこの81のマスと睨めっこしている。きっかけは、読んでいた新聞の片隅にこのパズルを見つけた事に始まる。電車の車内で手持ち無沙汰、「なんだ単純なパズルじゃないか、こんなものすぐに…」と軽い気持ちで挑戦し始め、気がつけばその思わぬ難解さに一度は諦めかけたが、解けぬ事が腹立たしく、結局自宅へ持ち帰り再度挑戦し見事征服。
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ばかばかしい様だが、その時の達成感に何とも言えない満足感を覚えた。解く方法はいたって簡単だが、なかなか一筋縄では行かない。当然簡単な物から難易度の高い物まであるのだが、手掛けると解けないからと諦めて放り出す…と言う事が結構出来なくて意地になってしまう。諦めが悪いと言うか、凝り性と言うか、多分このパズルにはまっている人達は皆同じでは無いだろうか。周囲の者からこんな事を言われた。「忙しく時間がないと言うなら、そんな無駄な事をやめれば?」と。しかし、繰り返される日常生活の中で、歳を積み重ねて行けば行く程、私達は達成感を味わうと言う事があまり無い様に思う。良識ある大人がパズルなんて…と思うよりは、一つのパズルを解く事で、小さなガッツポーズを得られたり、小さなストレス解消になるなら、それも良しではないだろうか。パズルを通して親子や同僚等々の会話が弾むなら、疎遠に成りがちな人々の融和剤となるなら一石二鳥。歳とともに短縮されて行く様に思える時間の流れの中に在って、これを無駄と思うのか、それともある意味気分のリフレッシュと捉えるか…。何事においても自由な発想、脳の軽快な動きは大切な要素で、一方向からだけ見ていては、新たな物は生まれてこない。追い詰められた状況の中では、見えている物まで見えない錯覚に捉われてしまいがち。
今年も貪欲に五感を羽ばたかせていきたい。
華道専慶流 西阪慶眞
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