●2008年9月1日発行/専慶流いけばな眞樹会主宰・西阪慶眞
いけばな専慶流/唐ゴマ
●花材/ 唐ゴマ、久留米鶏頭
●花器/ 黄釉平水盤花器 慶眞デザイン花器

ポイント 
 お神楽の鈴に似た実を付ける唐ゴマ。紅色の茎と葉の表情を余す事なく捉え、空間美と力強い動きを表出させます。幹は竹と同じ空洞なので、根元は割りません。久留米鶏頭をあしらい、見越、控に配し、引き締めます。左奥には見越し流しの女株でバランスをとります。


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●花材/ スズバラ、ドラセナ、
デンファーレ
●花器/ 紺釉壷

ポイント 
 
小さなトゲのあるスズバラ。下垂した赤い実の表情が可愛い。その表情を十分引き出すよう角度をつけて流し、ドラセナ、デンファーレで引き締める。

●水揚げ 水切りだけで十分。撓めはほとんど効かない。足元のトゲはハサミの背で擦り、取る。

いけばな専慶流/スズバラ

 いけばな専慶流・ダリア 大輪種ダリア(滋賀県・日野ダリア園にて)


いけばなの心「知・情・意」

 人間、誰もが持つ心的要素「知・情・意」とは、何を指すのでしょう。これは花を手にして構築したり表現を模索する中で、より深く養われる心の作用です。逆に言えば、いけばなをする事で人間の心を強く、美的に培い、生活に役立たせる効用があるのです。
 「知」は、知識や感覚を加味し、身体に「認識」させる能力。単なる「知識」とは異なり、如何に幅広く、そして、深く感じるかなのです。感じるためには様々な情報が頭に蓄積されていなければなりませんね。例えばユキヤナギが素材として目の前に5本置かれたとします。植物学上から見ればすべて同じDNAを備えたユキヤナギですが、実際、生ける場合、形や表情はすべて異なり、決して同じではありません。この「かたち」から受ける印象の違い、感じ方が問題となるのです。それは、経験だけではなく、他の植物との比較知識、材質感、色、形などの総合判断から、一本一本のユキヤナギの表情、個性、枝の特徴、美の心髄を探りだし、組み合わせを考えたり、時には曲げたりする事によって引き出す作業をするのです。その能力、それが「知性」なのです。
 「情」は、感情です。悲しい時、嬉しい時、人は感情に流され、なかなか平常心的回路で評価するのは難しいものです。私達はその「立場」を常にコントロールし、ある時は激しく、ある時は穏やかに心を操る能力が必要です。イライラしている時には「花を生ける気持ちにもなれない」では、困ります。例えば古木のボケが素材に来た時「こんな刺々しい素材が来て!」なんて不快感を抱いていては、折角の素材の良さなど見分ける事は到底無理です。どんな状況下に置かれていても、冷静に心をコントロールし(今の感情に左右されないで)素材から素直にその美を受けとめる感情がとても重要となるのです。

 「意」は、意志なのですが、平たく云えば、考え行動する心の作用で す。フォックスフェイスを挿す際、重くてなかなか止まらない。でも、不安定を知りながら次に挿し進めるなんて事はよくありますよね(後で倒れたりするのが解っているのに…)。また、撓めて失敗し、折る人も多くいます(不注意の繰り返し)。これは個人の環境、生活習慣、性格などが左右しますが、それを如何に純粋に、その行動を生起させ、持続させるかの心的能力。フォックスフェイスを手にして、現代花に生けようと思ったり、それを少し奇怪な雰囲気に仕上げようと考えたりする、その心の積極的な思慮、選択を決意したり、実行に移す能力です。意志の弱い人は忍耐に欠け、自分の判断では、選択或いは行動に移せず、依存する。意志はまた自由でなければならない自発性が問われ、自分の殻を打ち破る姿勢もまた必要です。
 素材とする植物は生きもので、二つとして同じ表情のものはありません。さらに、日本人固有の詩的感情や情緒性をその植物に写し出し、個人の植物感を形成しています。これらをその都度、リセットし、再燃焼させ構築する…その背後で働く演算の鍛錬、これこそが、三位一体(知・情・意)の修行なのです。


             華道専慶流 西阪慶眞


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花模様  専慶流