専慶流●2010年2月1日発行/専慶流いけばな眞樹会主宰・西阪慶眞
桃

●ポイント

 筋いけに準じた、見せ所の花桃。素直な茎に餅花をパラパラ蒔いたような、可愛い桃色の花が春を告げます。3月3日の女の子の節句には欠かせない花ですが、残念ながら路地での開花は3月末頃で、節句には促成ものが使用され、2月から出回ります。実際の茎は作品のように綺麗なカーブではないが、花を落とさないよう慎重に曲げていきます。菜の花の他に椿がよく似合います。


菜の花の成長は早く、とくに、気温、光に敏感なため、生けあげた後も茎が曲がったりするので、形が変われば生け変える必要があります。

●水揚げ 必ず水切りします。



●花材/ 花桃、菜の花
●花器/ カップ型指定花器
●花材/ あおもじ、シンビジューム
●花器/ 指定短冊花器

ポイント
 アオモジの茎は結構折れやすい。太い幹はダメなので、細い枝を少し曲げて表情を見いだす。
 ここでは左右の動きに統一し、左右二個の剣山から右、左へと構成していきます。
 シンビジュームの葉もアオモジの動きに合わせ、緑の色を補足する感覚で、軽快な動きを。

 

●水揚げ 水揚げはとても良好。

青もじ


 働く仕事館 
働く仕事館(京都学研都市)

「京都は、震度5」

 あれから十五年。そうだ、十年を迎えた頃だっただろうか、「私、生きて良かったの?」、心に負った悲しみと戦う人達がいる事を知り、この場に取り上げた事もあった。震災で失われた尊い命への悲しい思い、生かされた命のあり方を考えさせられたからだった。そのきっかけは、報道と言う立場に在った人達が、震災後の人々の取材を通して様々な苦しみを抱えて生きている人々を知り、生かされた命を、もっと堂々と生きて欲しい、生かされた命を大切にして欲しい…と言う思いで取り組んだものだった。そして今年もまた報道の、違った角度から当時の震災を振り返るドラマが放映された。悲惨で壮絶な現場で、現状をいち早く人々に知らせるべく奔走する報道マン、情報を伝える為には、今この手を差し伸べる事よりもシャッターを押す事を優先しなければならない…その行動が人として正しいのかどうかと言う大きな重い心の葛藤…思いやり、優しさ、信念、仕事…様々な立場に応じた判断がギリギリのところで問われた。涙を流しながらでも、使命を全うする為には、時には、二者択一にならざるをえない。市民の立場から見れば、行き過ぎた報道と、捉える見方をする人もいる…。人類始めての経験下、目の前の光景が一瞬に地獄絵と化したとしたら、はたしてどれだけの人が正常?な判断で行動できるのか。涙の奥で、彼等もまたいち早く正しい情報を伝える為に、一分一秒を無駄にする事無く自らの命をかけて発行、配達した神戸新聞の社員一人一人の団結した熱い行動には、文句なく涙した。

 こうして十五年前の震災を振り返っているこの瞬間にも、惨劇の中で苦しんでいる人達がいる。日本時間一月十三日の朝、人口九百万人の小さなカリブ海の島国ハイチでマグニチュード7・0の地震が首都を直撃。一週間を過ぎる頃に届いたその瞬間の映像には、噴煙を上げ、まるで砂の城が崩れていく様に、失われて行く街の様子が映し出されていた。それは遠い国の出来事では無く、やはり経験をした者の胸つまる光景だった。震災の広がりは時間の経過とともにその悲惨さを増して行く。失われて行く多くの命、困難な救出活動、十五年の時が流れたあの日の情景と重ねずにはいられない。そして、時間の経過とともに生じてくる新たな問題がある事も間違いない。
 自然の猛威の前に人間は、文明はどんなに脆(もろ)いものかと言う事を、私達は時折嫌と言う程思い知らされる。現代文明を駆使すれば、形ある物の再建、復興は、そこに反省点も加え更に強固な物が作られるだろう。しかし、どんなに強固な建物や道が出来ても次の災害に絶対に耐えうるとは限らない。被害に遭った人の奥底に付いた傷が癒される事などまったくない。形ある物は崩れる事は承知しているものの、様々な場面で、どんな事に向き合う事になるのか、誰にも解らない。そんな時の為に自分自身を見失わない様、心の鍛錬が必要かも知れない。

 

           華道専慶流いけばな 西阪慶眞


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