五月の空に、悠々と泳ぐ鯉のぼりをあそこにもここにもノと数えたのはもう遠い昔の思い出。生活様式の変化で大きな鯉のぼりを見る事は激減した。それでも子供の成長を願う親心、ひと時はベランダに小さな可愛い鯉のぼりが並んでノほほえましく眺めていたものだが、近年その数も少なくなり、五月・こどもの日・鯉のぼりノと言った季節を象徴する風景は年々減少。
さて現代社会、国民の祝日としての「こどもの日」の定義を正しく認識している人はどの位いるのだろう。近年の社会現象と言う言葉を使うには余りにも心痛むが、母性愛、親心、人としての思いやりや優しさノそんな人間らしさの欠如からと言える様な子供に関わる犯罪が後を絶たず、年々増加傾向にある。「子は鎹」であったはずなのにノ子を持つ一人の親として居たたまれない気持ちになる。
四月半ばの東京では四十一年振りの雪、三十年振りの寒さを記録した。関東に限らず日本列島様々な地域で冬並みの積雪があり、満開の櫻に、泳ぎ始めた鯉のぼりに雪が積もると言う状況に成った。異常な現象は人の心の移ろいだけでは無く、自然現象も異常の一途をたどっている。予想外の気温の乱れは寒暖差の激しさや日照時間の不足など、季節を彩る植物や野菜の生育に大きな影響をもたらしている。お茶の名産地では、芽生えたばかりの若葉が一晩で褐色にノ呆然とする生産者達の苦悩の顔。お茶に限らず、様々な分野にわたる被害の大きさは想像を超える。暖冬・冷夏と言う単純な異常気象の区切りでは済まされない程の気温変化は、私達の生活の根幹を揺るがす危機的状況といえるかも知れない。
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追い撃ちを掛ける様に、アイスランドで火山が噴火、火山灰が欧州北部に広がり、周辺諸国をはじめニ十ヵ国以上の国で空港閉鎖や、運行規制となった。一週間後にはほぼ復旧したとは言え、これほど広範囲にもたらした機能麻痺、運行停止は始めての経験で、損失は多額にのぼるだろう。このたびの噴火は、火山が氷河地帯にあったためにマグマが水と反応、水蒸気爆発を起こしたからだと云う。
このような事件が起きると、いつも思いの行き着く所は、どんなに高度な文明になろうとも、人間は自然の前に無力であると言う事実を突きつけられる事である。自然の脅威を感じながら、片方では宇宙ステーションで二人の日本人飛行士が共に作業をすると言う歴史的瞬間を迎えた。自然を無視し破壊した我が儘な人間は地球を追われ、宇宙へと生活の場を展開ノふと遠い日の少年漫画を思い出した。事業仕分けの渦中にも取り上げられている宇宙予算だが、心情的には削ってもらいたくない。
華道専慶流 西阪慶眞
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