267人のある中学校の男子生徒が体育祭で挑んだもの、一年生から三年生までの生徒全員で作る七段のピラミッドと呼ばれる組体操。皆が一つの目標に向って何かを成し遂げられるのは、彼等にとってこの時代しか無いと言う学校の教育方針に乗っ取ったものである。様々な取り組みの中でこの組体操が恒例になっていると言うのだが、七段ともなると一段目の生徒に掛かる負担は相当なもので、崩れた時の危険性も無視出来ない。ましてこの時期、一年生はまだ入学して間もなく、まだまだ小学生の様相のまま、そんな幼い一年生をも含めまとめ上げるリーダーとなる一生徒が全生徒を引っ張り本番へと臨んだ。当然の事ながら練習中に完成する事は無かった。何度も何度も崩れ落ち、その度に達成へ向ってあらゆる面からの検討を重ねる。体育祭当日に与えられたただ一度の挑戦の為に、様々な形で全員の士気を高める為に努力をするリーダーの姿に、言葉は悪いがそこに昔何処にでも居た腕白坊主、ガキ大将を見る思いがした。目的達成の為の並々成らぬ努力と、統率力と、実行力。練習中には内心の反発や不満を抱いた者も当然いただろう。しかし、何気なく見ていたテレビの放映だったが、不成功に終わった後の彼等の行動に、胸熱くなるものがあった。成功に導けなかった3年生の涙に、「僕たちがきっと来年成功させる様頑張るから」ノと。前年度6段をクリアー出来なかった先輩に、意志を受け継ぎ成功を届けたいと頑張ったリーダーと同じ思いに至った後輩達の姿がそこにあった。
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現代社会の中で稀薄になっていく人間関係、失われつつある協調性、自己中、モンスターぺアレントノ組体操一つでその全てを払拭。学校が意図した、一つの事を全員でノは、学生だけで無くそれを見守る人達をも巻き込んで、誰もが同じ思いで一つの目標に向う姿をそこに映し出していた。失敗に終わった現実に、成功では得られない多くの美しい涙がそこにはあった。その場にいた学生も教師も親も、放送するアナウンサー達、画面を通して見る視聴者ノ誰もが、不成功に終わった現実にでは無く、言葉に成らない感動の涙を共有していた。
共に在るノが様々な場面で薄れつつある様に思える現代、皆で流した涙、溢れる涙は、心に優しさや人としての思いやりを無条件に呼び覚ましたノとは言えないだろうか。こんなデーターも聞いた事がある。現代はストレス社会、そのストレスの解消に涙を流す事が有効であると。それも内から湧き上がり、零れ落ちるその瞬間が最も有効なのだとか。流す涙が心を浄化して行くと言う事になる。私達は絵画や彫刻、演劇、文学等様々な芸術に触れる時、或いは美しい自然に出会った時、時には一輪の花に感動し涙を流す事が出来る。また、見ず知らずの人のふとした行動に心動かされることもある。
私達には日々の生活の中で多くの感動に出会える機会が沢山与えられている、それを忙しさの中で見過ごさない様心掛けたいものである。
華道専慶流 西阪慶眞
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