●2010年7月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞
いけばな専慶流/デルフィニューム
●花材/ 縞ガマ、斑入りフロックス、ナデシコ、鳴子ユリ
●花器/ 変形現代花器

●しっとり、おだやかに。

 円錐花序に咲かせるフロックス。一般には花色は白、又は赤色で、葉は濃い緑色。写真の種は自宅で毎年咲いているもので、花色と斑入りの優しい葉がよく調和し、とても控えめ。一方でさりげない自己主張を備えている点が魅力的。葉の斑入り模様の表情を損なわないよう、ガマも斑入り種を選択し、薄ピンクのナデシコを配し、しっとりした美を引き出しています。

ポイント 
 しっとりおだやかな風情をわずかな「傾斜」で表現。一枚一枚の葉の表情を見渡し、そつのない配置を。

水揚げ 水切り。ガマは風に当てない事。


●花材/ ダンチク、ノウゼンカズラ
●花器/ 黒釉皿

ポイント 
 料理を盛る皿に庭にさいた花をさりげなく挿した即興花。
家族団らんのテーブルを飾るのにおすすめで、背丈を低く構成するのがポイントです。

水揚げ 水切り。

専慶流/カンパニュラ

  瑠璃玉アザミ(自宅にて)

技術者の熱い魂

 たとえ自身の体は燃え尽きても命がけで守り抜く、最後の力を振り絞り未来へ夢や希望を繋げる…と言うけなげな生き方が当たり前だった頃が昔の日本には確かにあった。しかし、我が身を犠牲にしても人の為にと言う常識は、何よりも強いとされていた親子の絆、母性愛でさえ稀薄になってしまった現代では「そんな生き方は今時流行らない」と即座に言われそうだが、これぞロマン…正にそんな生き方を示した一つの物語の完結が、未来への序章となるだろう出来事が、多くの人に夢と感動を与えた。
 月への往復に換算すると約8000回に相当すると言う60億キロの距離を、エンジントラブル等、関係者さえ帰還は絶望的と諦めかける様な幾つもの支障を乗り越え、予定より3年遅れ、じつに、7年間と言う途方もない歳月の旅を終え、6月13日の深夜、小惑星探査機「はやぶさ」が地球帰還を果たした。その一部始終を見つめ続けた技術者や多くの人々が、まるで我が子が無事に帰って来たような感覚で見守っている姿に、命あるもの以上の絆のような体温が感じられ、再会を果たした映像に釘付けになった。見守り続けた7年の歳月、当然トラブルの度に掛かる周囲からのプレッシャーも大きくなるばかり。しかし彼等にとって「はやぶさ」は単なる仕事では無く、自分たちの思いの全てで生み出し育んできた愛の結晶。視界から外れた際には、どうして居るのかと居てもたってもいられなくなる、予定の行動が出来なくなるともう二度と戻って来れなくなる、遠い宇宙の塵となってしまう…そんな思いに。奇跡に近い帰還に立ち会った技術者の「おかえり」と言葉を掛ける彼等の顔には我が子の無事にホッと安堵する親の表情があった。そして困難の末に帰還を果たした「はやぶさ」の本体は大気圏で完全燃焼したが、皆が待つ地球へ最後の贈り物、小惑星イトカワの物質が入っているかもしれないカプセルを無事オーストラリアの地に帰還させた。感情の無い機器が生み出した心暖まるドラマと言えないだろうか。

 人の成果に批判的、もめ事は責任転嫁、協調性の欠如…感情ある私達人間社会では、日に日に心が冷めているように思えてならない昨今、だからなおこの奇跡に感動したのかもしれない。
 多くの夢と期待で待つ日本へ厳重に梱包されたカプセルは17日に無事帰国、産みの親の元へと帰って来た。カプセルの中身にまだまだ夢は続いている、世界初のこの成果が今後どのような物語を描いて行くのか、新たな幕開きに成る事は間違い無いだろう。ただ、驚く様な科学技術の進歩に感動する事よりも、今回の帰還が多くの人に与えた感動は、どんな困難にもひたすら向き合い乗り越えて行く姿、どんな状況にあっても「諦めない」事の大切さだった。感情ある人間同士の繋がりが稀薄になって行く現代にあって、人の手によって生み出された機器が、奇跡の帰還と言う形で人の心の大切さを思い出してもらう為に戻って来た…そんな風に捉えるととても微笑ましい。このような感覚はマックを愛するパソコンユーザには通じるかもしれない。身の回りには科学や理屈では割り切れない何かがある、そんな経験をした人は少なくないだろう。

             華道専慶流 西阪慶眞


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花模様  専慶流