近年、山作業に時間をとられ花卉栽培の畑作業が留守となっていましたが、この春、社中の好意で畑を借りる事が出来、一念発起で着手。
畑作業を敬遠していた理由は他にもあったのです。言葉に出したり、ましてや活字にするのはもっと避けたい事だが、「加齢」から来る身体の変調が最大要因。動きの自由さにかなり制約が加わり、大袈裟に云えば体力の自信喪失になっていたのです。20年程前の数年間、一反近くの畑で汗を流した経験があり、作業に手抜きがあれば、そのまま生育の優劣に反映する事を思い知らされていましたから、生半可な思いつきでは着手出来ないことは承知していました。しかし、今回、肉体的、時間的制約を押してでもやって見たいと言う気分が上回ったのです。そう、新素材の発掘と言う目的の為に。
花はひまわりと鶏頭。ひまわりは最近品種が増えていたので、いけばな素材として自分の手で栽培してみたかった。鶏頭は久留米系の大型。以前栽培した時の種が取ってあったので、機会をうかがっていた。しかし、このような古い種が発芽、生長してくれるのか。一方で、この種は自然交配されているため、どのような色、形の花が出来るのか、そんな期待感に満ちた大きな夢があったのです。
借用した土地は稲作の休耕田。鶏頭は加湿地を嫌うので、適地ではありません。植えるのに随分迷いましたが、勝負をかけました。4月中旬、耕運機で耕してもらいましたが、土が拳大の大きな塊(岩)となっており、種を直接蒔けるようなさらさらした地質ではありません。急遽、ポット播きにして、苗を作る事に。4月末、自宅で種蒔きを。発芽温度には不足した低温が続いていたため、加温シートを被せ、大切に見守りました。
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しかし、20年も経った種です。ゴマ粒よりさらに小さい粒にその生命力が残っているのか。随分心配しましたが、芽が出たのはそれから約一週間後でした。言葉に現せない程の可愛い幼芽が顔を出してくれたのです。黄色っぽい葉、赤っぽい葉、すでに花色をも予感させています。種から発芽させての育苗は久方ぶりだったこともあり、かなり興奮した喜びが全身を走りました。
植物は気候で左右される面が大ですが、今年はかなり厳しい年でした。雨の日が少ない。しかし、雨量はゲリラ的。体温を超える猛暑の連続。異常気象。そんな環境の中では、虫の異常発生や病気誘発も。近年話題になる生物多様性の問題点を目の当りに体感。平たく云えば共存共栄の世界。持ちつ持たれつの鎖で繋がれていた生物が、ここに来てそのバランスを崩しかけてきているのです。土の中にも生物が生育し、土の活力を維持しているのですが、今回、夜盗虫の大発生に見舞われ、鶏頭の芽が次々に餌にされたのです。また、ひまわりにあっては、開花とともにカナブンが異常発生。開花したばかりの新鮮な花びらを次々に食べ、観賞価値はゼロに。今後の多様性維持に大きな不安を抱いたことでした。
葛藤の模様はHPに掲載していますが、心地よい熱い汗を流させてもらった畑作業でした。
華道専慶流 西阪慶眞
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