神業、神の領域、ゴットハンド…人は類を見ない才能、技術等に対して称賛の意を込めてそれを特別視する。想像を超える事実を前に感動し、感嘆もする。先日、ノーベル賞を受賞したＩＰＳ…理論的に言えば自分の髪の毛一本で自分をもう一人、クローン人間を作り出す事が可能？になると云う。まるで昔観たＳＦ映画の世界が現実となるのだ。悪用すれば…。しかし、見方を変えれば、この発見がこれまでの医療現場で回復が困難とされていた症例も治療が可能となり、回復を諦めざるを得なかった人達にとってこれ以上の朗報は無いと言う現実もある。
　遠い昔、人は太陽を神と崇め、山を神宿る神聖なる空間と捉え、一本の樹木に宿る神を崇め、流れ落ちる滝に神を見出し手を合わせた。自然を尊び敬い、自然の中で育み、子々孫々と命を繋いできた。自然との共存が無理の無いあるがままの命の営みであった。しかし一方で人類は、人にとって都合の良い生活を求め続けて来た。これが文明、科学技術の発達に拍車をかけ、その代償として自然が奪われ、様々なカタチの歪みを生み出している事は、誰の目にも明白。知らず知らずの間に私達人間が導き出した世界である。そしてそれは地球上に留まらず、人工衛星、ロケット開発…宇宙へと向かう人の探究心が、そのまま宇宙ゴミを作り出していると言う現実を、恥ずかしいことだが最近のニュースで耳にするまで全く知らなかった。打ち上げ成功、打ち上げ失敗と言う結論は耳に届くが、その結果宇宙空間にどんな弊害がもたらされているのかなど想像もしていなかった。そう、普通に考えれば当然の結果として宇宙ゴミが発生する。そのゴミが人工衛星と衝突しないように、ロケット打ち上げの妨げとならないように既に２４時間体制で監視し続けている機関がある事を初めて知った。私達人間の飽くなき探求心、欲望が宇宙にまで影響を及ぼしている現実に対して、私達に成すすべは無いのだろうか。

　自然重視の世界観が、人間の都合主義で変化し続ける現代社会、全てを批判し否定はできない。良し悪しの判断は、人の価値観、立場で変わる。すべての事象は「両刃の剣」…どちらを選んでも、その反対側には異を唱える者が必ず存在する。生きにくい社会、昔の様に？ロマンを求めて世界を見る事はもう難しすぎるのだろう。こんな記事が目に…見上げた月にいるウサギ、餅つきをしているお伽話に耳を傾けさせるのはもう無理。そのウサギ、隕石が月に衝突して出来た模様だとか…夢は夢のままにして欲しかったと嘆く向きもあるが…夢はひとつ一つ消えていく。
　原発を平和的利用と云う一文で信用させられ、取り返しのつかない事態へと突き進んだ現実。それでも、その否を素直に認め、修復に努力する姿勢があればまだ救いもある。活断層が原発の真下を走る疑いがある中での稼動。さらには安全を確保できれば賛成と云うこのふてぶてしさは、精神を疑うと云うより狂気の沙汰。　　
　今回の素晴らしいＩＰＳ技術がビジネス先行でなく、人類への真の夢の贈り物になるよう、活用には幾重もの安全策を願いたい。