●近所の人が庭で咲いた枝を届けてくれました。これは梅なのか、桃なのか?交配種のようですが、花色は澄んでいてとても落ち着いた反面、華やぎをおぼえる上品な花木です。花好きな人が育てているだけのことはあって枝振り、しまりもよく、他の素材を寄せ付けないほどの個性的な美しさを放っていました。このような良質の素材を目の前にすると生け手はワクワクします。茎の曲がり、枝先の鋭さに目を向けます。 ポイント 作例のような良品素材は入手が困難な時代ととなっていますが、折角手にした素材、枝の持っている魅力を最大限引き出し、活用させたい。撓めはわざとらしくならないよう、隠れた技で対応します。花の付き方の強弱を見計らいながら全体のバランスを。
ポイント 眼鏡のような形をした2つの挿し口を連ねた面白い花器。大きさは横幅25センチ程度。 円い小さな剣山を使用している。
ゼンマイを左右の口から直上させ、ゼンマイ部分を横にして渦巻形状を強調。配材はカイウ、レースフラワーの白色だけにして、清純さを全面に引き出しています。
●水揚げ 水切り。
パンジー・ビオラ
言葉の暴力、害毒、罪
「今、幸ですか?」と突然問われれば、あなたはどのように答えるだろう。街角で問われた人の答えは、当然人様々。「欲しい物を欲しいだけ買えないから幸せじゃない」「好きなことが出来ないから幸せじゃない」「裕福では無いけれど、何とか日々を暮して行けるのだから幸せ」「辛く、苦しいことばかり、でもささやかなことだけど幸せ!って思えることがあるから、私は幸せ」…と。決して年齢に大きな差のある回答者達ではなかったにも関わらずこの回答、前者の二人と後者の二人の間には大きな違いがある。 人は何を基準に幸福感の有無を決めるのか。物質的に満たされることを良しとする者と、精神的に満たされることを良しとする者の差、それは生きてきた環境に大きく左右されるのかもしれない。ある意味物質的な満足を得ようとする者には、それを得られた瞬間に幸福は訪れるものの、必ずまた新たな欲望が生じ、幸不幸は限りなく繰り返され続ける。それに対して精神的に満たされている者は、現状を維持する為の努力を惜しまない。物質と言う形では手に入らない貴重な財産を手に入れており、人として何が一番大切なのかをこれまで生きてきた時間と空間の中で感覚として身に付けてきたのかも知れない。 昨年11月に来日したワンチュク国王の国ブータンは、世界一幸せな国だと言われる。その所以は何か。様々な要因のなかでこんな記事を見つけた。決して裕福とは言えない自然豊かな山間にある自給自足の村では、太り気味、高血圧と言った生活習慣病が増加。
病院がなく、日本では助かる命も助からない、平均寿命も短い…それでも幸せと感じる人が多いのはなぜか、それはブータン人はのんびりしているから幸せなんだと笑って言ったと言う。自然体で生きるということが幸せ… そこに近代化に合わせた無理強いがないのかもしれない。真摯に自然を受け止める、命を生きる無理がない。例えば、医療の現場で命を守る努力は決して怠ることはできない。しかし、医療の発達がもたらした命の終わり方に無理強いを感じるのは私だけでは無いだろう。 今日本が抱えている様々な問題も、報道伝達媒体の拡大化により、相手を選ばず誰の耳にも目にも届く。しかし、その原因を認識するすることも、解決策も余りにも複雑になり、専門家ではない私たちの知るところではない…と言うか、様々な問題のその深さは計り知れず、複雑過ぎて単純に何が良くて何が悪いのか、その判断さえ容易ではない。更に問題なのは、一面からの認識によって、それが一方的に正しいと偏った判断をしてしまう、時にはその判断のもとに知らぬ間に大きな流れの中に組み込まれてしまうと言う危険性が常にあることを、私たちは知らなくてはならない。 詩人/高橋睦朗氏は朝日新聞コラムに次のように記していた。「言葉自身が罪深いもの」「言葉ができたから、数式がうまれ、その結果が原子力の発見にもなり…。生きている限り罪や害毒と立ち向かうためにも言葉しかない…矛盾だが。」
華道専慶流 西阪慶眞
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