専慶流 ●2014年2月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞
いけばな専慶流/啓翁桜
●花材/ ウッディーベア、デンファーレ、ガーベラ、タニワタリ
●花器/ 土偶調金彩手付花器

●ウッディーベアー

 カスターネットの名前で呼ぶ人もいますが、固い実は二つに割れ、楽器のカスターネットに似ている事から命名されたのかもわかりません。何れにしても性格な情報が不明な植物です。

ポイント 
  一足早く春をいけるいけばな界では、当然の事ながら温室素材が中心となります。木蓮、桜、桃、山茱萸( さんしゅゆ)など花木類は温室に入れ、促成開花させているため、自然咲きとは異なり花力がありません。また、草ものは温室やフレームの中で室温を上げて栽培しています。環境の異なる温室育ちの「草もの」達は、2月の外気には馴染めず、風邪をひく事があるので、飾り場所に注意しましょう。

●花材/ レンギョウ、スナップドラゴン、タマシダ
●花器/ 緑釉現代花器(大津寄花堂作)

ポイント 
●投入「流体形」の応用です。本勝手いけは主が左に出ますが、ここでは枝向きの都合で逆勝手にいけていま
す。主枝は緩やかなカーブを描くように撓めますが、折れやすいので慎重にゆっくり曲げていきます。前の枝は
深く傾斜させ、中間に伸びのある枝を選び、流麗な構成とします。配材には二色のスナップドラゴンと、タマシダで調和をはかりました。

水揚げ 水切り。

いけばな専慶流

 いけばな専慶流 フリージヤ

歩んだ足あと

 東日本大震災から間もなく3年、そして阪神淡路大震災、
オウムの地下鉄サリン事件からはおよそ20年の時が流れる。
この時間を皆さんがどの様に捉えるのかは、その人がどの
ような状況下に在ったのかで大きく変わるのだろう。様々
な報道を介して視覚、聴覚の記憶として受けとめた感覚と、
実体感として受けとめなくては成らなかった人との記憶差
は、否応無く両者の間に大きなブレを生じさせる。
 先日紙面にオウムの文字を見、サリン、上九一色村(か
みくいしきむら)、サティアン、麻原彰晃…当時の報道が頭
を駆け巡った。しかし、それが遠い日の記憶と言う感覚は
第三者の意識。当事者の忘れたい現実は、どんなに時が流
れてもその瞬間が常に身近にあり、その苦しみを、恐怖を、
憤りを忘れることは到底出来ず、突然に降って湧いた心の
大きな穴は、決して埋まる事はない。オウム関連の新たな
裁判の報道に、そっとしておいて欲しい思いと、正す事へ
の思いの狭間で否応無く当時の現実に再直面する人々のそ
の苦悩を垣間見た。事件の解決を願い、たとえ叶ったとし
ても、心に負った体感を忘れる事の出来ない当事者に対し
て、第三者側に立った人達にも忘れてはならない大切な役
割がある。それはどんな出来事も決して風化させてはなら
ないと言う事だ。誰もが二度とあってはならないと思い願
う戦争でさえ、当事者ではない他人事はいつか忘れられ、
同じ過ちに向かいかねない現実。今、20 年余りの間に、現
に姿形を変えながらもオウムの信仰者は近年増加傾向にあ
ると言う。今年新成人となった若者達に問えば、事件を知
らない、聞いたことはある等と回答する… 20 年の時の長さ
をまざまざと見せつける実態だが、あってはならない第二
のサリン事件への可能性をなんとしてもくい止めなければ
ならない。

 某新聞紙面の中に見つけた記者の短い問答。中国、韓国の反日
感情を扱ったニュース。現地ではさほど大きく取り上げていない
事象を日本で記事にするのは「読者が好んで見るから、雑誌はそ
んな記事を取りあげると売れるから…」と云う。中立で、真実を
伝えるはずの報道のこの記者の言葉、感覚に怒りさえ覚えた。
人の心を悪しき方向へと煽ったり、国際問題へと導く事にも成り
かねないのだ。報道と言う手段、新しいニュースをいち早く伝え
知る事も重要だが、震災やオウムの事件等々忘れてならない出来
事を後世に伝え第二の悲劇が起こらないよう、また、復興への支
援が続けられるよう、せめて毎年掲載という、過去を伝え続ける
事はとても重大な責ではないだろうか。
 開かれた情報社会だからこそ、人任せで世の中を見ていてはと
ても危険な時代と云える。平和な穏やかな世界を目指すなら、私
達一人一人が時に困難でも、安易な意見に流されるのではなく、
真実を探り、真実を見極める力を養わなくてはならない。私たち
は報道と言う手段で様々な出来事を知り得るが、それを鵜呑みに
するのではなく、自分の価値観、自己責任において判断出来る能
力を高めないといけない。と同時に、自ら語れる過去は、一つで
も多く若い世代へと伝える事が、先を歩く者の努めではないだろ
うか。

               華道専慶流 西阪慶眞


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