花模様ロゴ ●2014年8月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞
いけばな専慶流/朝鮮槙

●花材/

グラジオラス、ベンケイソウ、トルコキキョウ

●花器/

カップ型指定花器

●行の色彩生花。

 グラジオラスはアヤメ科植物で、花期は6?8月で、栽培の容易さから花壇などには重宝されます。
近年は新品種なども増え、花弁の色も多い。茨城県は球根生産一位、切り花出荷は2位と人気が高いが、京都でも愛好者は多い。
花は下から上へと徐々に開花を移して行く。

ポイント 
 天から入れていきます。茎は弱く、剣山に止まりにくいので、挿したら動かさないよう素早く生け上げていきます。
弁慶草も剣山に挿しにくい素材です。根は割らずにそのままゆっくり押さえていると留まってくれます。

夏期の管理 気温の高い夏期は花器の中の水が腐りやすく、花も長持ちしません。水切りの励行はもとより、下記の管理法を試してみて下さい。
●一日一回、氷を入れて水温を下げる
●花器の水を入れ替える
●銅や錫などを入れる


●花材/

朝鮮槙、姫ヒマワリ、アンスリューム、カンスラン

●花器/

ブルー花器

ポイント 
 朝鮮槙は撓めがきくため、枝を曲げた扱いをして、茎の流れを捉えた扱いがおすすめです。作例は左への流れを明快に表したもので、枝の曲げ位置や深さなど、注意深く作り上げます。

水揚げ 朝鮮槙は不要ですが、他の草ものは水切り。一日一回、氷を入れ細菌の増殖を抑えます。


 専慶流/タカサゴユリ 神戸市立森林植物園

穏やかさを欠く思いやり

 流通、輸送技術、IT関連等の進歩により、望めばなんでも見聞き出来る恵まれた環境に生活している。その特権の行使が我が国伝統文化の将来を左右するのではと言われているが、さてその真意はどうか。
 歴史の中で作り上げられ、継承されてきた伝統文化。本来そこにあった「内容や質」、それが日本人らしさでり、特徴だった。しかし今は、日本文化、日本らしさ、日本人らしさノそれが見えなくなるほど、見た目の社会は変わり続けているように見受ける。
 西洋かぶれ(ノ言葉は悪いが)、明治の文明開化に始まる西洋文化への傾倒が、近代文明の発達をもたらしたのだが、一方、目新しい物ばかりを求め、欲を満たすことに夢中になり、本質を見失った一面も無きにしもあらず。
 いつか見た外国人教授の言葉を思い出す「日本人はなぜ日本から学ばない」。日本独自の良さに他国の人は深く感銘し共感しているのに…。目の前にある大切な木の実を見つけられず、他の木の実ばかりに目が行く、欲の拡大?だろうか。隣の庭の実の方がよく見える錯覚は、いつの間にか、本当に大切な実が忘れられてしまい、我が国独自の感性までも錆びつかせてしまいかねない。
 例えば現存する明治の伝統工芸品に見る技巧、日本人のきめ細やかな手先の器用さ、気の遠くなる時間の積み重ね、根気、一途さノ各種技巧士の手によって生み出されたその作品のひとつひとつは、まるで神の領域を思わせるほどに見る者を圧倒し、言葉にならない感動、驚愕、驚嘆ノを体感させる。それほど貴重な技巧にも関わらず、後継者が育たない現代社会…何故か?。最大の要因は暮らしから遠く離れた事。見たり触れたりする機会が無くなった事だと思う。里山文化はまさにそこに住んで肌に感じ、五感を通した智慧や工夫が暮らしに豊かさをもたらしてくれていた。

しかし、いったん崩壊させてしまった「暮らし」から、どのようにしてこれまでの優れた文化を継続させていけばよいのか。解らなくなるだけでなく、不合理だけが目立つようになった過去の苦い経験が。だから、継続だけではダメ。暮らしに融け合い、如何に優雅に共有し、そして互いが学ぶかが根底として根づいていないといけないのではないだろうか。
 百円均一商品に問題があるわけではない。日本人の長所は機能面だけでなく、常に美意識が平行して作用いていた。竹を採ってきて箒を作る。板で囲いを作る。屋根に藁を敷いて雨をしのぐ。斜面を利用した田畑の造成…等々、小さなものから大きなものまで、合理性プラス「美意識の高さ」だった。
 残念ながら近代技術は流出してしまったが、培って来た「感性」は我が国独自のもの。さすがにこれだけは外国に売る事は不可能であろう。日本でしか出来ない、日本人の手でしか産み出されない巧妙且つ合理性、そしてさりげない品格では決して劣る事はない、まさにプライド。ただ、同じ空間で同じ物を見ながら、そこから得る物は感性、探究心…人それぞれに異なる。良さを感じるから見入る。感動、感銘は視覚から捉えられるものノ理屈ではなく、作品を前に無条件に本物を体感する事で、新たな興味を持ち、反射的に「更に深く知りたい」、自ら学び、手がけて見たくなる…と言うのが日本人の本質。だとすれば、優秀な技術保持者、芸術高揚に貢献する人にはその学び環境を個人だけに任せるのではなく、国が優先し援助するのも大切な施策。
 伝統を繋いでゆくノ古臭いのではない、そこに存在する(生きる)価値こそ、私達日本人の誇りとなるもの。人の手で作り、生み出された気魄を、可能な限り後世へ伝え続ける…それが私達ひとりひとりに与えられた責任。私達が向き合ういけばなもしかり、大切に伝え続けて行きたいもの。

             華道専慶流 西阪慶眞


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