元旦、新しい年の始まりを迎える度に、今年こそは、と誰に強いられる訳でもなく気持ちを引き締め、前向きな気分に清しささえ覚える。過ぎた時間に思い留めるのではなく、新たな事に挑むプラス思考へ。この切り替えが無理強いでなく、当然と受止められるのは、この日だからと感じる人は少なくない。年齢ではない、訪れる未来は誰にも等しく未知数であり、過ぎた時間の中での成功も失敗も、後悔も、全てが変える事の出来ない事実として過去の括りとなるのも同じ。だからこそここから更に、時には新たに…と一歩を踏み出す決断や勇気に繋がり、日々躊躇いがちな、今更と後退的になりがちな思いが、この日だけは、「こうありたい、こう成りたい」と云う意志に向かわせてくれ、その思いを後押ししてくれる…元旦の持つ特別なエネルギー?のせいかもしれない。
一年の計は元旦にあり…。一日24時間という誰もに分け隔てなく訪れ過ぎて行く日々と何も変わらない一日。しかし、この日に願い誓った特別な決断や目標が大きく自分の未来を変えて行くきっかけとなる。夢ではなく現実へと繋がって行く事実を、私達は先日のノーベル賞受賞者や、様々なスポーツで結果を残した人々、新たな技術開発を成功に導いた人々の報道で確かに感じた。夢に向かって積み重ねて行く時間は前進のみでは無い。
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積み重ねて行く努力だけでスムーズに道は開かれる物ではなく、挫折、痛み、苦しみ、悲しみ等が伴う。それ故に単なる成績、結果ではなく、そこに人としての輝きが備わり、ひいてはそれが人の心をも動かすのでは。一朝一夕に叶う物ではなく、新たな年を迎える度に、どんな思いで向き合って来たのか…自らを省み、自らが望む未来を思い描き、それを誓った日々であった事は云うまでも無く、前進への意味ある節目節目と成ってきた事は間違いないだろう。人は勝手な物、その勝手さがあるから、過去に縛られず前向きに時を繋ごうと努力が出来る。様々な研究や、技術の向上の陰には、多くの失敗があるが、謙虚な検証があってこその成功。一日の時間の長さは誰も同じ、それをどのように過ごすかによって、時間の価値は人それぞれに異なって行く。
今、日本独自の文化が失われて行くと嘆かれる現代に、私達は縁あって華道と云う伝統文化と向き合う空間に身を置き、出会いを得ています。一輪の花、一枚の葉、一本の枝に向かう謙虚な姿勢が、伝統文化継承へと繋がって行きます。新たな始まりの時、願わくば、花ある暮らしが人を癒し、心潤す空間である事をひとりでも多くの人に感じてもらいたいのです。一本の植物と会話を深めることで自分の置かれる空気感は大きく前進します。
華道専慶流 西阪慶眞
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