不思議な出会い?は言い過ぎだが、私が「カミオカンデ」の存
在を知ったのはもう20年以上前の事になる。偶然見た朝のワイドショーだったが、地下深くに建設された観測施設の映像に、その余りの大きな規模とその姿、更には、そこで観測されるのが地球ではなく宇宙の事だと云う紹介に驚いた瞬間をはっきり覚えている。ただ、何故その頃話題に成ったのかは記憶に無い。その後、クイズ番組を耳にし「カミオカンデ」のことだと即座に答えが思い浮かんで何気に得意に成ったのが2度目、そして2002年小柴教授のノーベル物理学賞受賞の折が3度目。「スーパーカミオカンデ」の成果から今回の梶田東京大宇宙線研究所長のノーベル物理学賞受賞へと繋がった。素粒子、ニュートリノの質量…現実でありながら何処か非現実の様に思えたり…受け止め方は人それれ。
前日の5日には、大村智(おおむらさとし)北里大特別栄誉教授を「人類への計り知れない貢献」と讃え、ノーベル医学生理学賞の授与が発表、連日日本中がその業績にわいた。寄生虫による感染症の特効薬の開発、10億人の命が助かり、今なお年間3億人が救われ、更には撲滅へと向かっていると。「ひとの為になる事を…」の思いがベースに、教授は「いつも人の役に立つことはないか、それだけを考えてやって来た」と言う。人のまねをすれば道は越えられない、どうすれば良いのか、自分でその方法を地道に追求する…これが教授の信念で、その継続が今回の受賞へとつながり、この先も変わる事の無い教授の生き方。
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このふたつのノーベル賞受賞のニュースで、私達は受賞内容、
経過、人柄等々…多くの情報を得たが、少し見方を変えると、
もしも受賞していなければどれだけの人がその存在を知り、そ
の過程を認知しただろうか。受賞を逃しても、発見の事実や多
くの人を救っている偉業の重さは何も変わらない。だが、その
開発により研究費捻出のみならず、後輩の育成や地域住民の潤
いなど、人のために生きる先生の一環したバカでかいカタチを
私達は知らずに終わっていたかも。
考えてみれば私達は与えられなければ知らずに終わって行く
事実がどれほどあるのだろう。現代は情報社会、世界中で日々
起きている様々なニュースを、リアルタイムで知り得る環境。
しかし、連夜のノーベル賞受賞のニュースに、改めて気づかさ
れた事がある。情報社会とは云え、発信者、とりわけ報道機関
の関わりはとても大きい。にわかに注目を浴びたラグビーWカ
ップでの日本人の活躍で、ルールさえ知らなかった人が応援し
たり、子供達が教室に通う現象まで。高視聴率、高買率…重視
の情報だけではなく、子供達に夢を、人と人の繋がりを、人と
しての思いやりや優しさ、逞しさ…等々、人の心を豊かに導き
学ばせてくれる情報共有の努力が必要だと再認識。とりわけ、
発信機関はネタもとの掘り出しと幅広い情報伝達に努力してほ
しいと思う。
華道専慶流 西阪慶眞
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