アウンサンスーチー…の名に、「えっ!」と、思わず声の先、
テレビの報道に目を。記憶の中に留まっていたこの名、最初に出
会ったのは、遡る事30年有余。更に彼女に興味を持つきっかけと
なると、そこからさらに10年余り遡り、当時出版された「誰も書
かなかったソ連」と言う書籍になる。私達は今民主主義の元で自
由が当然の生活を営みながら、なおも不平不満を堂々と言葉にす
るが、それが取りざたされ公に問題視される事も、それが原因で
拘束される事もない。そう社会主義の政治下や、軍隊が政権を握
る社会の暮らしとはまるで異なる事は、義務教育の中でも学んで
きた。しかし、漠然と知っていると言う程度、現実にどのような
生活を強いられているのかを敢えて意識する事も無かった。そん
な中で当時手にしたこの本、社会主義の国での実生活が書かれて
いたのだが、良し悪しは別、政治が違えば、個人の生活環境がこ
れほどまで異なるのかと言う驚き、その理不尽さが、スーチー氏
が軟禁生活を強いられた経緯や、その軟禁状態の中での生活がど
のような物だったのかを知る事に繋がった。更には「上海の長い
夜」等々を読みあさり、自由に発言、自由に行動出来ない現実が
どのようなものかを思い知る所となり、当時改めて民主主義の国
に生活している自由を思わずにはいられなかった事を覚えてい
る。と同時に、同じ時代の中で、まだ若きスーチー氏が民主化へ
の道を目指し立ち向かう姿に、信念を曲げない志の強さに感服し
た事も覚えている。その後2度目の軟禁、3度目の軟禁…間を置
いて報道にあがる彼女の名を目に耳にする度に、彼女はまだ戦い
の中に居る…過ぎて行った時間の長さを改めて思った。志を持ち
続け、共に戦い続ける人々が後を絶たないと云う事実が持つ意
味、過ぎて行く長い時間の間に諦めると云う苦渋の決断が選択肢
に上る事は無かったのだろうか。正しい事だとしても、繰り返さ
れる迫害に屈する事無く正しいと主張し行動し続ける事は決して
容易ではなかったはず。
|
|
そんな苦難の時を越え、民主化へ向けて
の第一歩、ようやく望み目指した公正な選挙が今年11 月実現、
スーチー氏が率いる野党が圧倒的勝利を収めたのだ。勝利とはい
え、当然ここが目標到達点ではない。ある意味ここからが自分達
の目指す社会へのスタートになる。これ迄は敵対する勢力が相手
だったが、ここからは産みの苦しみと向き合う事になり、これ迄
とは違った厳しい時に向かう事になるのだろう。しかし、これ迄
と同様、信念を持って前向きに挑み続ける事が新たな道を切り開
く糸口となる事は言うまでもない。新たな社会に向かって動き始
めるミャンマー、スーチー氏と共に民衆がどのような社会を築き
上げて行くのか…私の人生の半分近くに消えずに記憶に留まり続
けているスーチー氏、次回どのようなニュースでその名を耳にす
るのか…可能な限り短期間の内に、民主主義の落ち着いた社会が
始まったと言うニュースである事を望み願いたい。
気がつけば師走。今回スーチー氏のニュースに、志を曲げず信
じる道を歩き続ける事が、思いを確かな形へと導くと言う一つの
事実に出会わせてくれた。また今年も種目を問わず多くのアスリ
ートから得た多くの感動は、それぞれが想い描いた志への惜しま
ぬ努力の積み重ねの先に導き出されたもの。志す事、目標を持つ
事が、人を成長させ前向きにするノ。日々慌ただしく、自然災
害、人的災害、更には情報網の発達により耳に届くニュース等に
憂える事の多い現代社会だからこそ、なおさら必要不可欠に思え
る。一年を振り返り、新たな年を迎える節目のこの時、ベタでは
あるがもう一度自身が求める道を精査問い直して見てはどうだろ
う。誰にも制限される事の無い、自分自身の思いのままに…。
華道専慶流 西阪慶眞
|