晴れた日の冬の夜空は、乾いた空気の中でどこまでも澄み渡り、都会の空でさえ、いつもより多くの星が目に届く。見上げた空の美しさを思いながら、さて、”自分もまたこの広い宇宙空間に存在するひとり…”なんて思う夢多き人はどのくらい居るのだろう。見上げたその空の輝きにさえ気づく事無く、喧噪な街の中で日々を積み重ねている人の方が多いかもしれない。夜空を見上げてロマンを語っている暇など無い…と。
しかし、現実には遠い空を目指す、様々な夢、目標を持った多くの科学者が存在する。今中高年と呼ばれる世代の人は、一度は火星人の存在を想像した事があるのではないだろうか。子供の頃に真面目な顔でその姿を想像し解説している科学者の番組を見た記憶のある人も多いはず。しかしロマンはロマン、想像の域を越えない夢物語…現代人はクール?だから、そんな非現実的な事をと一笑に。信じる信じないの比率を調べれば、明らかに知識豊富な現代人の方が否定的な見方をし、小さな子供に問うてみても、そんなの居るはず無い!と即答で帰ってくる確立の方が高い。
しかし、火星に、もしかしたら私達と同じ様に文明を持つ生き物が居るかもしれない。宇宙を、遠い星を調査する事によって、私達の起源を確認する事が、未来に繋がるかも…。実はこんな夢物語的なロマンを、真剣に科学で解明しようとしている先生達が存在する。
その未知なる物を求め続ける心が新たな物を作り出し、不可能を可能に結びつけて来た叡智の社会に私達は生きている。あるがままに準じているだけでは、文明の発達は無い。欲、望み、夢、あらゆる人の思いが、この近代社会を作り上げてきた。
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昨年気象衛星「ひまわり8号」が、奇跡の帰還を果たしたはやぶさの後続機種「はやぶさ2号」が打ち上げられ、はたまた、海外からは火星探査機から火星の現状データーが地球に届けられている…という現実。見上げた空の果てにある星と共に宇宙の一員である私達の小さな地球上では、イスラム国の名の下に殺戮、戦争、人種差別、自然の猛威の前に成す術無く、悲惨な結果に無力さを思い知らされ、我が国では今も異常な火山活動が続き、何も無かった海に突然島の出現も…私達に予測不可能な事態が、誰の目にも明らかな現実として起こっている。ロマン、夢物語と嘲笑するのは簡単。しかし、現実に少しでも回避に繋がる可能性があるなら、夢の超特急が、新幹線、リニアモーターカーとして現実に実用化に向かった様に、様々な可能性を持った宇宙開発が私達の生活をより良い物へと導いてくれる期待感、夢は大きい。
確かに良し悪しは表裏一体、宇宙開発に掛かる膨大な費用を思えば、その一方で後継者が育たず失われて行きつつある伝統文化への支援に…。
自国の誇りある伝統文化の価値を外国の人が認め後世に伝えようとする真剣な姿を見ると、恥ずかしささえ…。私達は何を望み、何を大切にしなければ成らないのか、これ以上手遅れにならない内に私達ひとりひとりが自分自身に問い直すべきでは。
「おもてなし」の言葉が世界に拡散した事はいい事だが、本質は日本人のこゝろの内にある、思いやり、感謝、気遣い、繊細さであり、発信元の暮らしが備わっていてこその礼儀、意義であろう。
華道専慶流 西阪慶眞
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