「節目」…、皆さんにとってどのような意味を持っているでしょう。一つの区切り、リセット、リスタート…。物事に始まりがあり、そこには積み重ねて来た時間があり、決して変える事の出来ない過去が、通り過ぎて来た事実が存在します。節目は、そんな過去からの、訪れる未来へのある意味貴重な贈り物なのだと思いませんか。1分1秒の長さであっても、過ぎてしまえば全てが紛れも無い事実として残されて行く。どのような過去の上に、明日と云う未来を築いて行くのか。それは、強要される物ではなく、自らが自らの意志で積み重ねるモノ。全ては自分次第…だからこそ、満たされた日々の先に更なる夢を見、時には葛藤の繰り返しにもがき苦しみ、また大きな分岐点に立たされたときには、強い意思決定等によって新たな夢へと向かうのでしょう。ただ、人は時に脆く、時に強く、人生に予想外の展開を招く可能性も秘めています。しかし、その時々の状況に、自らの意志によって前向きに心の切り替えをし、新たな節目、転換期と捉え、そこからまた前を目指し、歩き始めるのです。
もっと単純に、元旦、成人式、誕生日、結婚等々の行事を期に「さぁ!ここから」と気持ちを引き締め直す人も多く、時には月の始まり、週の始まり、一日の始まり…に、節目を意識し、素早く気持ちの切り替えをする人も。過ぎた時間に拘る人の一方で、ケセラセラ、成る様に成る…的な生き方が、無責任の様に思われがちだが、見方を変えれば、頑固に意地を張って人生に無理強いをするのではなく、反省と考察、思慮をふまえ、自分の意志の元に柔軟性を持って、より自分らしい生き方をする方が、毎日がより活動的で生き生きとして見える…そのような生き方には輝きさえ見える。
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我が国は戦後70年、大きな節目の年をこの夏迎えましたが、私はこれまでとは違った形で過ぎた時間の重さを感じる機会を得ました。戦争心理、誰もが尋常ではない精神状態の中で、戦うどの国もが自国の正当性を高く掲げ、命をかけて自国の勝利を願う。冷静ではない状況下での末端に到るまでの意識操作が行われていた事実を正しく認識してもらうためと前置きし、敢えてモザイクを掛けない凄惨な現場の動画を交えながらの解説。初めて目にする余りにも衝撃的な映像に胸が苦しくなり、今なお鮮明に脳裏に刻まれている。そして何よりも悔しく、悲しいのは、敵対する両国が戦時下においてありのままの現実を、真実を互いの国民に隠さず伝えていれば、70年目の節目はまるで違っていた…と互いに理解していると云う現実だった。事実を知らされず戦う兵士等々にとって、互いに相手は敵。敵にも自分と同じ様に妻や家族がいると思わなかった。その事実を後になって気づいた…と。こんな番組をNHKで放映する事にたどり着いた事を思えば、人の命の重さ、戦争の悲惨さは国を問わず同じ思いで共有出来る平和な時代が訪れたのだと感じる反面、世界に目を向ければ、今も一触即発の緊張状態にある国、テロの脅威等々国家間の不安定さをみるにつけ、平和の難しさを…。
こんな時代に節目を迎えた私達に出来る事。皆が自分の家族の為に過去の過ちに思いを寄せ、平和な未来を思う事が人と人を繋ぎ、結果、穏やかな暮らしに繋がる。改めて思う、小さなひとりの思いも、それが多くの人に広がれば、大きな力になる事を。「正しい事は正しい、間違っている事は間違っている」と勇気を持って誰に向かってもはっきりと声に出して伝える事が、平和な未来の為の確かな礎となるのでは。
華道専慶流 西阪慶眞
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