新聞の片隅にある、テレビやラジオで一瞬の内に過ぎて行って
しまう、そんなトップニュースではない脇役だが、何故か心引か
れ見過ごせないと言ったニュースに出会った経験はありません
か。今夏、私が出会ったそんなニュース…。
一人の少女が「生きたい」と言う祈りを込め、命の限り折り続
けた小さな折り鶴が、今も時を超えて人と人の心を繋いでいる。
広島平和記念公園の「原爆の子の像」のモデルとなった実在した
少女。この禎子の折鶴の話、あなたは知っていますか?広島の人、
過去に現地を訪れた人を除けば、はたしてどのくらいの人が知っ
ているのか。毎年迎える原爆の日の度に、報道の何処かに何らか
の形で記されてきたはず…どれだけの人の目に止まり、記憶に
残って来たのだろう。また、原爆で亡くなったのは日本人だけで
はなく、当時広島に居た外国人もまた被爆し亡くなっている。同
じ状況で命を落とした事実は変わらないのだから、彼等にも同じ
様に慰霊碑を…と建立した人が居たことを私は新たに知った。人
の人として人への思いやり、亡くなった命に区別は無い…との思
いからだと。思えば、情報溢れる現代社会の中で生活しながら、
私達は無造作に与えられる多くの情報に対し、気づかなければ、
興味を持たなければ、知らないまま通り過ぎてしまう事の方が遥
かに多い様に思える。
原爆の投下から71年目を迎えた今年、5月にオバマ大統領の歴
史的な広島訪問が実現したのは記憶に新しい。先の禎子の折り鶴
が繋いだ縁…、今、原爆資料館にはオバマ大統領が祈りを込め自
ら折った鶴が展示されている。米国大統領と云う立場での来訪は
大きな意味を持ち、それをきっかけに、国内だけではなく、諸外
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国からも多くの人が平和記念公園、ドームを訪れ、当時のその悲
惨な状況、原爆の恐ろしさを改めて認識し、手を合わせ、未来に
向かって自分達が成すべき方向を改めて考えさせられた…と感想
を述べている。人の思いは、思いを込めた分、さらに多くの人へ
と伝わって行く様に思える。
日米は相対する当事者の立場、人に依っては決して歩み寄れず、
自身の置かれた立場、環境、人の感情として仕方が無い事でもあ
り、無理強い出来る物でもない。長い年月を経た今も、人々が心
に負った傷跡は消えない。むしろ、人類の未来へ向かって、平和
な世界を目指す為にも、ある意味決して消し去ってはいけない事
象。互いが持つ様々な要因を理解し合った上での歩み寄り、共に
生きる、そんな思いで今も世界中で多くの人が戦争反対、核廃絶
を訴え続けている。
毎年夏に巡り来る終戦記念日、この日に向かって報道される過
去の出来事、新たな真実の報道などを通じ、多方面での学びを重
ねる事はとても重要。煩雑な日々には無理でも、原子力発電が問
題視されている現代、世界中がテロの脅威にさらされ、現実に戦
時下にある国、戦争を引き起こしかねない緊張感ある国交等々、
せめてこの日くらい、他人事ではなく、我が身に降り掛かるとし
たら、回避する為には…様々な事を思いめぐらし、迎える未来を
考えるゆとりを持つことも必要なのではと言う思いになる。ただ、
安易すぎるかもしれないが、どんなに相対する関係にあっても、
人と人を繋ぐきっかけは、人以外には無い。身勝手な私利私欲を
放棄し、互いに相手に対してほんの少しの聞く耳と、思いやりと
優しさの共有が出来れば…その誘導の難しさを、しみじみ感じる。
華道専慶流 西阪慶眞
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