専慶流 ●2019年4月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞

専慶流・花菖蒲

 

ポイント 
「花向きに表情を」

@花菖蒲は背丈を活かし長目に構成。花菖蒲の茎は柔らかく、剣山に留まりにくいので、不安定な場合は添え木を。
A花に付いている葉を縦の空間に配し無駄なく、効果的勢いを。
B下部前後にイタヤモミジを自然の姿を写す。
姿で強弱ある流れに。
C大きなシャクヤクの花で引き締める。

 
●花材/ 花菖蒲、板谷紅葉
●花器/ 創作花器


●花材/ キウイ、ステリーレ
●花型/ 投入(流体応用)

ポイント 
●茎の曲がりがおもしろい事から現代花や造形志向によく使われるキウイ蔓。3月下旬頃から楽しめる若芽は可愛く、枝全体に春の歓びがひろがる。ただ、若芽は引っかかるとすぐ欠けるので細部に神経をはらいながら引き締めた構成を。配材のステリーレはオオデマリと勘違いするほど酷似してるが、茎は細く、淡緑色から白に移すグラデーションが優しい。キウイの線と若葉を引き立てるよう淡緑系で統一。球形の器を使うことで軽快なリズムが一層引き出されます。

水揚げ 水切り。

専慶流・キウイ



  ハナミズキ

旺盛な好奇心

 興味の有り無しは、時に人生を大きく変える。決して大袈裟でも、言い過ぎでもない。仕事柄、花に向かう多くの人が私の回りには居る。ある意味修行の道、決して楽しいだけの道ではない。それでも続けられるのは、そこに緊張感や達成感、何よりも真剣に向き合う自分だけの時間と格別空間に融合するとき、自分にとって掛け替えのない救いになる…。単なる興味の有無が私達の想像を遥かに越え、様々な場面で個人の生き方の価値観を左右するのだ。
 今、読書の好きな九十歳半ばの老人がいる。年を重ねる中で、視力の衰えと諸問題発生に、泣く泣く一度本を手放した。しかし、自分の好きな自分らしい時間、何よりも楽しみでもあった読書から離れたストレスは想像以上の精神的負荷に。時間が掛かっても、少しでも…と、無理を承知で再度読書に挑んだ。目が回復した訳ではなく、現実には更に悪化…それでも、以前のように一日に何度も新聞を開き、広告欄も含め隅から隅まで全てに眼を通し、時には気を引いた書物の紹介にメモをとり、足腰のリハビリ、健康維持、人と会話し社会に交わる…を兼ねて書店へ足を運ぶ。部屋には、読みたいと思った本を読むため、失礼だが年齢から想像できない政治・経済・文化など、様々なジャンルの本が積んである。そんな読書の日々から再度離れる決意を。読んだ内容が記憶に残らない、少し前に読んだ内容を忘れてしまい、話が繋がらない…もう楽しめない、情けないからと。しかし、再度それほど間を置くことなく本に戻った。気丈にも忘れても、読でいるときの楽しさ、何かをしている時間を過ごせる事の幸せを思い、生かされている事に感謝が出来ると。

 諦めるのではなく、出来ることを続けるだけ…。
 「夢を、目標を持ちなさい」と云う言葉は、誰もが何度となく耳にしてきただろう。そう、叶う叶わない、事の大小ではない、それに向かう思いが、想像を越える努力や学びや、発見に、そして自身を前向きに成長させてくれる。興味を持つことが、楽しみや、達成感、満足感に繋がり、時にそれが生きる喜びに、自分を支える要素にも成り得るのだろう。
 慌ただしく自分を振り返る余裕もない、趣味なんて、興味なんて…ではなく、そんな日々だからこそ尚更、明日への気分転換、心穏やかに自分を取り戻せる時間と空間が大切なのでは。ほんの少し自分の心と向き合って、心地好さを感じた空間、過程に苦痛が伴ってさえ無条件に好きで向き合えたものは…と、少し思い出してみてはどうだろう。時に、時代の節目に遭遇する人生に恵まれた?機会を期に、新たな思いで自分らしく生きる…を考えるのも悪くない。そう、大切なものを、大切にしてきたものを諦めるのではなく、可能な限り持ち続けることを。きっと、それが日々の自分の心の支えとなる…と信じて。
 自分らしく前向きに生きるための秘策は、年齢も、地位も、環境も何も邪魔しない。ほんの少しの転換で、自分が好きで、楽しめる、居心地よい時間と空間を持ち続けること、その意志が可能につなげるのでは。

                
            専慶流 西阪慶眞

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花模様  専慶流