花模様/専慶流 ●2019年5月1日発行/専慶流いけばな眞樹会主宰・西阪慶眞

専慶流・シャクヤク生花

●「水揚げ最優先、手際よく!」

ポイント 
 5 本いけ、7 本いけ、9 本いけがあるが、葉の
美しさを捉える意味から7 本いけがお薦め。
素材の選び方
「天」茎がしっかりして、弓なりに反っている。
先端の葉が絞まっている。花が上に向いている。
「人」受けた花、葉。柔らかさ、流れを感じる茎。
太い、表情の堅い幹はダメ。
「地」近年は色彩効果から斑入りナルコユリの
葉を使用しているが、絞まった葉があればシャ
クヤク一種でスッキリ生けあげる。(人添や控
を取った残りの枝で、形の良い葉を配す)
「天添」しっかりした茎。伸びやかに見える。
「天の裏添」通常は天添より少し高く配すが、
シャクヤクは花が大きいため、胴より少し低い
位置に、人の裏添と兼ねて。
「胴」茎がしっかりしている。葉姿が良い。
「人添」人よりしっかりしている。葉が絞まっ
ている。
「控」開花(最初に咲く)。葉が絞まっている。
※上記を基準に全体のバランスをはかる。

 

●花材/ シャクヤク
●花器/ コンポート花器



 

 

●花材/ 二色ウツギ、タニワタリ、枯れ素材
●花器/ ツルクビ花器



ポイント 
 正月には松竹梅、ひな祭りには桃の花、子供の日には花菖蒲、秋には菊など、伝統行事と共に、定まった花の取り合わせが受け継がれている。しかし、生活様式や空間の変化、花の多様化に合わせた取り合わせは日々進化、いけ手の新感覚が問われる。
近年目にする素材は和洋を超え、形、色、質感も豊富で限りなく幅広い。一見、材料的には恵まれた時代と云えそうだが、必ずしもそうではない。むしろ、一昔前には感動する稽古花が教室に。面白い枝振りの松や梅、万作、朴ノ木、山梨、茶の木など、現在とは比にならない締まった良品が担保されていた。その裏には、自然と共に暮らしてきた里山の人々の手塩にかけた守があったからだが、高齢化と共に進んだ過疎化の負の陰が悔しい。

「令和」では、とりわけ伝統を尊ぶと共に斬新な取り合わせ≠ナ爽やかなやさしい風を吹かせ続けたいと思います。

水揚げ 水切りで対応します。


専慶流・二色ウツギ

  

心新たに、令和

 令和元年(2019年5 月)、新な時代の幕開け、その瞬間を確かな命の営みの中で迎えた。ここから個人に、国に、世界に新な歴史が刻まれて行く。今日が昨日に、明日が今日に…これまでと同じ24時間の積み重ねだが、この一日が持つ意味は重く、大きい。時に一人の人間の人生を大きく変える貴重な一日に成り得るからだ。そう、節目、けじめ、過去を省みここから心新たに前向きに…と、心奮い立たせスタートを切る者にとっては尚更にその意味は大きい。
 新元号の発表は、一月前に遡る。私的には淡々と迎えた瞬間だったが、テレビで写し出される御祭り騒ぎ、新宿や渋谷、大阪等様々な場所での歓声や、配られるの号外の争奪戦等々の熱狂ぶりは、私には予想外の人々の反応だった。ただ、その様子を見ながら驚きと同時に、ふと心のどこかで、平和な国だなぁ〜と単純な感想を抱いたのは、私だけだったのだろうか。生きてきた時代の記憶は、その全てが自身が積み重ねてきた確かな時間の中にある経験。経験の無い事実の理解は、言葉悪く言えば「上辺だけ…」?。伝え聞く事実、時に残された遺跡を目にすることで豊かな想像力が事実に近づけてくれる。精神的疑似体験を通して伝わる物が、史実の良否、善悪、損得…すべてを考えさせてくれる、考えるべき事であり、考えなくてはならない事、そう、自分が当事者なら…と。過去の人の経験が、時を越えて自分の身を救うことに繋がる。同じ過ちを繰り返さないことへの、一番の近道なのではと思う。

 明治、大正、昭和、平成、そして五つ目の元号「令和」を迎えた老女の言葉が耳に残る。戦争という自らが体験してきた事実を言葉で伝えられることで、自分を理解し感情を受け止めてもらえる。そして、過ちを繰り返さないためには更に学ぶ事が必要と云う思いになって貰いたいと。だが、学ぶトキ、いかに正しく理解するか…、思い込みや私利私欲がそこにあっては意味がない。私達の望んだ豊かさが新な問題の元になる現実を、核、原発、プラスチック…、い
くつもの自然災害等も目の当たりにして来た。新な時代を迎えた今、科学技術の進歩、人の思考は、新な開発に向かうだけで無く、この先それに伴って起こるべき問題を予測し、トキにはとどまる勇気こそがこれまでの学びだったのでは。
 肉親を失った老女の求めるもの、当時、自分の意志がそこには無く、時代に翻弄された…。それを認識するのは、随分時を経た後。今、この令和と云う新な時代を迎え、この先こんな思いをすることが無いことを願いたい。高齢者社会、この思いは、多くの人の思いであり、未来への警鐘では。
 人より優位に立つ一歩を踏み出すよりも、人類の平和のための後退が、より良い未来への前進へ繋がる…と、願いたい。「美しい調和」と世界に発信された「令和」と言う元号。人の心との調和は、全ての人への優しさに…自然情景から学ぶ情緒と云う我が国特有の宝とともに穏やかなやさしい時代であることを願いたい。

          

                華道専慶流 西阪慶眞

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