「いつも在るのが当たり前だと思っていたものが、突然無くなっ
てしまった…」問われて発した言葉、そこには本来言葉にできない
程、想像を絶する現実を前にした悲痛な思いが。文字だけを見れ
ば、言葉だけを聞けば、「本当にショックだよね、大変だよね」…位
の言葉でしか返せない。その内容が、昨日まで普通に生活していた
家が跡形もなく無くなってしまったと云う現実を前にした言葉で
は、返す言葉もなく、受け止める側も受け止めようがない。私達は
予測を超える現実?を突き付けられた時の自分をどこまで想像で
きるだろう。決して想像など出来ない。他者の経験を我が身の事実
として受け止めることは、その経験が非日常的な事であればある
ほど不可能になる。
現代社会の中で起こる様々な事故や目を覆いたくなる事件は数
多く、否が応にも目や耳に入ってくる。その中で日常生活を送る私
達は、いつしか全てのことが他人事ではない覚悟、自分に何が起こ
り、何に巻き込まれ、どんな人生を送る事になるのか解らない…程
度は理解している。しかし、突きつけられる現実の厳しさは、言葉
にできず、我が身に置き換えて…の想像には決して及ばない。
「かつて経験したことの無い…」の言葉を、私達はどのように受
け止め、向き合えば良いのだろう。備えあれば憂いなし…、どれ程
の、どのような備えが有れば避けて通れるのか。こうして綴りなが
ら、過去に何度も同じ思いに成りながら、繰り返し突きつけられる
悲惨な現実。始めの言葉は、10 月の台風19 号で被害を受けられた
人がマイクを向けられて発した言葉だが、台風が過ぎ日が経つに
連れ、その被害の想像の及ばない広範囲にわたる酷さが徐々に明
らかになってゆく。 |
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日常を取り戻すのは…、多くの被災者を思う
と、言葉が見つからない。私達には何が出来るのだろう。異常気象
の言葉のもとに警戒心を持っても、「かつて経験したことの無い
…」 の表現が何度も続けばそれは特別ではなく、何が起きても不
思議ではないのが現状と受け止め、予測できる可能な範囲で向き
合うしか無い。だからこそ、現実にはどのような備えが必要で、ど
うすれば避けられるのか。自分たちの住環境も含め、ハザードマッ
プにも真剣に目を通したい。
今年9月、国連気候行動サミットで16才の少女が各国首脳等に
環境保全、気候変動、温暖化防止…の取り組み方に対し批判のス
ピーチをしたことが話題になった。この少女の思いは、自分達の未
来への思いにある。私達がすべき事は、温暖化によって引き起こさ
れる異常気象に、自分達の日常を奪われないための努力。それは、
一朝一夕に取り戻せるものではない。日々の積み重ねの先に、我が
子の将来、子孫の未来がある立場に立ち、今、自分に出来ること
は?から始めるべきなのでは。そう、これ迄の繰り返しになるが、
事ある毎に、どんなに些細なことでも、一人でも多くの人が真摯に
受け止め、行動を取ってくれれば、そしてそれが、長い時を積み重
ねて行けば、必ず変わって行くはず。これまで幾度も受けてきた悲
惨な被害を、この先は避けられることに必ず繋がって行くのだと
願い信じて、この瞬間から自分の為に、一人一人が行動すべきだ
と、改めて声をあげたい。
地震、台風…度重なる災害に遭われた皆様を思うと、言葉が見つ
かりません。心よりお見舞い申し上げます。
華道専慶流 西阪慶眞
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