花模様ロゴ ●2019年8月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞

●花材/高野槙
●花器/飴釉四角器

 

●夏の盛花。

 マキ科植物、高野槙

ポイント 
 夏日本特産の高野槙を空海がご仏前に供えたことから関西では古くから美しい樹形を誇り、庭木など
身近に植えられていたが、近年では悠仁さまのお
印として選ばれたことから全国的に親しまれるこ
とに。いけばな素材としては高山に育つ枝葉の締
まったものが良いが、栽培者の高齢化、人手不足
から入手は難しくなっている。
一方、朝鮮槇( 左下の作品) があるが、これはイ
ヌガヤ属で槇ではなく、朝鮮とも関係なく、日本
産。栽培も安易で、切り花としても早くから生花
様式には好んで使われている。





●花材/アサガオ、カニクサ
●花器/鶴首創作器


ポイント 
 蒸し暑い日本の夏にそっと清しい気を運んでくれるのが、一輪の朝顔。
葦簀、簾、縁側、床机、風鈴、団扇、浴衣…京都
の古い町家では、夕方には打ち水が撒かれ、さり
げなく朝顔の一輪挿しが飾られた置き床がチラッ
と目にとまる様は古き良き時代の暮らしを伝えて
います。
プランターで育てた朝顔を紹介します。栽培はい
たって簡単で、6 月中旬に種を蒔き、あとは土が乾燥気味になれば水を少し与えるだけ。朝顔は切り花としても水揚げが良く、水切りしておけば小さな蕾みも順次咲き、数日間様々な姿が楽しめます。
ワインカップなど小さな器で愉しんでください

水揚げ 水切り要


 

 

  
笑み 日本人美学

 慌ただしく、目まぐるしい情報社会の中に在って、物事
の良し悪しさえ自分なりに結論付ける余裕もなく、消化不
良のまま誰も彼もが、知らぬ間に心身ともに負荷の掛かる
日々を積み重ねている。納得が行かない現実の中で生きる
術は、感情の制御、間違った自己防御へと向かってはいな
いだろうか。そんな感情がふとした事を切っ掛けに、思わ
ぬ形での発信、行動へと繋がってゆく。本来人は素直で在
ること、協調性ある自己主張をすることで、人との共同生
活の環境が成り立ったはず。その中で培われて行くはずの
人としての在り方は、遠い日、年長者から事あるごとに
「誰々を見習いなさい」と。そう、決して特別ではなく、
見習う対象がいくらでも身近に存在していたのでは。誤った自己防御が、結果的に目を覆いたくなる行為へ陥らないため、日々の中でどうあるべきなのだろう。
 小学校のグランド、幼稚園の園庭…何気なく側を歩きな
がらふと違和感を…。子供達が沢山居るにも関わらず、笑
い声が耳に届かない…。それだけでなく、子供の数を思え
ばその会話の声の少なさも気になった。授業間、僅かな遊
び時間さえ我先にと運動場に飛び出しわいわいガヤガヤ、
賑やかなと云うよりもうるさい程の光景が昔は当たり前
だった。また、子供に関わらず、何かしら人が集えば会話
や笑い声でとにかく賑やかになったもの。笑う門には福来
ると云う言葉があるように、自然に出る素直な笑顔は周囲
を巻き込んで皆を明るく元気に…。心から笑うことが健康
長寿に繋がると科学的にも検証済みだ。この「笑う」は万
人共通の感情表現。笑顔は、笑い声は、ただそれだけで、

時には言葉が通じなくても、その表情に導かれて自然に伝
わり、心解放された幸せな時を共有できてしまう。
 戸外で遊ぶ子らの笑い声や、電車の中で隣り合った親子
の限られた空間での遊びのなかで突然起こる微笑ましい笑
いに、こちらまで思わずニンマリ…そんな偶然の笑いは普
通にあり、その笑いを共有することが、何気ない会話と繋
がり、共に心地よい一瞬を過ごせた思い出も。
 だが、今は身近にこんな話もある。皆で大笑い…のはず
が、その話題を提供している人が嫌いだから、自分は笑わ
ない、笑えない…と言う。本来感情は、感性は人それぞれ
だから、受け止め方に違いがあるのは理解できる。しかし、
内容や、その場の雰囲気ではなく、ただその人が嫌いだか
らと云うことが前提となると、人と会話することも、大切
な意見交換をする場においても、嫌いな人とは、同調しな
い!の感覚に繋がる。本来持って生まれた感性、自然に内
面から涌き出てくる笑うと云う、人としての素直な感情さ
えも、自分の好みで、意思でコントロールすると云うこと
になるのか。それではある意味感情を持たないロボットと
同じ?インプットした情報に従うだけ。その内容の良し悪
し以前に、自分の意に沿わなければ交わらない、感情さえ
も押さえてしまうと云う行為が今の世では珍しくないとい
う。人と協調出来なければ、共存共栄への道は閉ざされる
ことになる。例え一部であっても、私達はそんな感覚を時
代のせいにしてはいけない。どんなに些細なことでも、誰
とでも、ひとつでも多くの笑顔、笑いを共有することで、
身体の内から自然に沸き起こる無限連鎖に繋げたいもの。

             華道専慶流 西阪慶眞

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