花模様ロゴ ●2020年7月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞

ポイント 

 真っ直ぐな寸筒は見慣れているだろうが、うねりのある花器は珍しい。一見ありそうだが、ちょっとした形の変化でそこに生ける花はとても楽しくなる。社中が育てたミニトマトを届けてくれた。枝先にたわわに実る姿はそれだけで画になるが、重い実を小さな花器に安定させるのは容易ではない。盛花、投入など、普段何気なく積み重ねてきた技が結果をもたらしてくれる。左右アンバランスな構成でリズミカルに。

水揚げ 水揚げは良好、水切りで十分です。

●花材/ミニトマト、カザリシダ
●花器/創作花器


ポイント 
 立体空間とは前後の 「間」。
基本枝(主)を立てないで前に傾
斜させ (横に並べるのでなく) 前
後、左右に。 側面図を丁寧に観
て、立体的感覚を掴んでほしい。。

水揚げ 水切りの励行

 

側面図



●花材/リアトリス、レザーファン、バラ、スカシユリ
●花器/手付き花器


  笹かざり

人間は考える葦

コロナウィルス感染に関する報道が明らかに変わった。心に重くのし掛かり、不安を増長させるものでは無く、医療従事者への感謝を伝える行動、互いに同じ環境のなかに居ながら互いを気遣い励まし合う様子、中には異業種であり自社の存続すら危ぶまれる状態にも拘らず、マスク、シールド、防護衣等々様々な感染防御のための機器開発や、個人で、中には子供の発案したものまで…今この状況のなかで自分に出来ることは何か?と誰もが真剣に考え行動する様子等々、そのニュースに人の人への優しさや思い遣りや温かさが感じられ時に涙さえ…熱いものが。
 また、様々な文化施設、遊戯施設、スポーツ等々再開の様子を目にして、皆が如何に感染防止対策に取り組んでいるのかが理解できるのと同時に、利用者の顔に、改めて、人はひとりでは生きられない、人と交わることで元気になり、前向きになり、心豊かな時を過ごせるのだと。互いが互いを尊重し求め会う関係が社会をスムーズに動かし、明日へのエネルギーに。 地球上を覆い尽くす程の勢いで私達の生命を、生活を脅かしたと言っても過言ではないコロナ禍は、夏を迎えてもなお終息の見通しが立たぬなかで、私達は回避、隔離から、このように未来ある明日を生きるために、様々な工夫や努力をすることで、コロナウィルスと共生への道を歩き始めた。

 思えば私達人類の歴史は、様々な困難に直面する度に、順応と適応を繰り返しながら進化し続けてきた。そう、止まること無く、どんな困難にも、試行錯誤を重ね、そこから学び、生きる術を見つけ出してきたからこそ今があり、また、私達も与えられたひとつの命を生きることが、未来の歴史を形作る核の一つとなることは確かなのだ。一人一人の存在は、世界や宇宙を思えば本当に小さなものかもしれないが、政治家や資産家等々何らかの力ある人達だけが社会を作り上げているのではなく、今この瞬間を生きている人皆がそれぞれの立場で、自分に出来る可能な限りの努力で作り上げるものだと実感。決して止まることのない生きるための人々の知恵が現代社会を築き上げてきたように、10年後20年後には、このコロナ騒ぎでの経験が新たな生き方、生活様式を作り上げているはず。
 ふと、「人間は考える葦である」と言う遠い日に学んだパスカルの言葉が思い出された。自然の中での人間の存在は弱いが、思考することができるのが人間。弱さゆえに諦めるのではなく、どうすればこの局面を乗り越えられるか…と考えることの繰り返しがこれまでの歴史を作り上げてきたように、今このコロナウィルスとの対峙がまた未来への新たな進化を導き出すことを信じ願いながら、改めて、全ての繋がりある人達への感謝をいつも忘れず、同じ社会に生きるひとりの命ある存在としての役目を改めて自身に問い、自分に出来る形で果たしたいと思う。

             華道専慶流 西阪慶眞

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