いけばな専慶流1998年11月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞


いけばな専慶流

花材/寒桜、旭はらん、菊

ポイント 今期に使う十月桜は、通称「寒桜」で親しまれる。江戸彼岸改良種の四季咲き園芸種。花形にやや丸みをもたせ、おおらかな形姿にいけるのがコツ。


いけばな専慶流

花材/桐の蕾、バラ

ポイント 
葉を落とした裸木に一見「実」?と勘違いしそうな蕾をつける桐。三角推状の形や自然の姿に捕らわれることなく、自由な方向、力を捉え、奔放な茎の形に面白さを見出す。秋を惜しむかのように残花のバラを華やかに捉えてみました。


専慶流いけばな 裏庭で実ったキウイ・ヘイワード

真の礼と文化

 私達の生活には、冠婚葬祭を軸にした「儀式」「作法」を暮らしの基盤としてきた部分がかなりあるように思われます。ならわし、しきたりも同様で平たく言えば「民意を反映させた暮らしのルール」ですが、これが結構、高い文化意識の構築に貢献してきたようなのです。
 人と人の結びつきを一層深くし、真心をより端的に美しく表現するために工夫された儀式、しきたり。
 人生の儀式を列記すると沢山あります。帯祝い、出産祝い、食べ初め、初節句、七五三、入学、卒業、成人式、就職、長寿祝い。
 結納、荷出しなどいわゆる結婚にまつわる儀式の数々や、葬儀、法要など。それに加えて、年中行事もある。正月の祝い、節句の祝い、中元、歳暮のご挨拶など。これらを「冠婚葬祭」とし、人生の儀礼として大切にしてきたのです。先方に失礼がないよう、或いは無礼と判断されないためにもこれらは教養の一部であり、社会の仲間入りの条件でもあったのです。
 ところが近年「虚礼廃止」など合理化が叫ばれ、日毎に簡略化が進んでいます。儀礼は古い、めんどう、堅苦しいなど多くの理由が挙げられますが、礼に託された民衆の心、祈り、双方の心のありようなど、正しい伝承を欠いたことが、現代の作法軽視を招いた要因なのでしょう。
 今では熨斗(のし)、水引、或いは紙折の礼法の約束事や意味も稀薄になり、形だけが残っているのが現状です。ややもすると「今の若い者は」と特別視しがちですが、礼の心、熨斗や水引をする理由が正しく伝えられていないからに他ならないのではないでしょうか。
 私達のいけばなも、古いと云わず、伝統花の正しい伝承こそ、明日への新しい志向につなげることを確信したいものです。

                              華道専慶流 西阪慶眞


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