花模様2004.12004年1月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞

紅?・専慶流

花材/梅、万年青、シンビジューム、アネモネ
花器/大津寄花堂作・赤呉須深鉢花器

ポイント 
近年枝もの素材の入手が困難となり、古木は望めなくなった。しかし梅は古木にこそ味があり、強さも表出される。作例素材は前栽の枝を切ってもらったもので、自然種と異なり引き締まっている。太い幹を剣山に差すのは容易でないが、深鉢で投入手法を用いれば簡単に留められる。足下を寄せて、引き締めることがポイントとなる。




専慶流・万年青

花材/とくさ、ユーホルビア、ソリダスター、カーネーション
花器/専慶流指定小品花器

ポイント 
すだれ越しに花を鑑賞するようなイメージで、左右に並べたとくさの前後左右に色花を添えます。ユーホルビアは左右の曲線を描くように配します。




 葦の乾燥(宇治川河川敷)

深 呼 吸

急激な変化の中で迎えた新たな平成十六年。平々凡々とした暮らしは再度戻って来るのだろうかと疑心暗鬼に陥るほど、近年、総ての「常識」が塗り替えられている。成長期のツケが一気に吹き出した格好とは云え「どうして?」の実体は想像をはるかに越える。土地神話は崩れ、銀行がバタバタ閉鎖する中で、職場さえも確保することが難しく、頼みの年金さえも容赦なく削られ、結果、将来を悲観視し、気運は益々暗い影へと導く。
 不思議なのは政治失態に起因するのはあきらかな現状に対しても国民は何故か寛大である。また、一方では今こそ労働組合の力量が問われるべき時だが、無気味な程静かである。穏やかな国民性の現れなのではなく、明らかにアキラメとも受け取れる。
 矛盾と疑問だらけの社会では当然犯罪も増加し、治安は悪化の一途。ここでも善良な市民が被害に巻き込まれ、泣き寝入り。インターネットや携帯を使った犯罪もどんどん膨らみ、歪み時代を反映する。
 私も過日その網にまんまと引っ掛かった。「閉店につき大処分」と云う宣伝文句に釣られて
ついつい首を突っ込んだのだが、送られて来た商品は子供の玩具以下と云う粗悪品。折り返し業者に電話したが当然出ない。完全な悪質詐欺商法だった。
 さて、こんな暗い背景下では防衛するのがやっと。闇の中に足を踏み入れないようにと常時気を配っていると、心も休まらず、ストレスは飽和状態になり、最悪状態では友情関係でさえ緊張から解放されない事態を生む。癒しで明けた昨年だが、受け身姿勢では改善されないところまで来ている。個々における積極的なアクション無しには抜け出せそうにない。
 組合を頼りにしていた職場からも追われ、定職に就くこともままならない時世。一気にアメリカ的雇用形態が主流をなす時代へと移行したのだから、いよいよ「人生なめたらあかんで!」通り、一人前の生活をするには以前と同じ甘えた思考回路では到底保証されない。すでに勝ち組、負け組の文字が飛び交い、明暗を分けているが、この色分けは自由業のみならず、会社員と云えども同じで、益々色濃くするに違いない。もはや女性だからと云った甘えも通用しない。結婚と云う完全就職に甘んじる「逃げ」も閉ざされ、主婦専業では家庭が回らなくなっているのが現状であろう。
 「花を生けている場合ではない」と云う台詞も高く聞こえてくる。それほど日本は緊迫しているのである。仕事に明け暮れる無味乾燥な暮らし、そこには夢もゆとりもない味気ない時間だけが流れる。これでは五感を備えた人間として生まれて来たことがむなしいが、人々の焦りがひしひしと伝わってくる。焦れば焦るほど穴を大きくするように、焦りは心の大敵で、そこからは健全な芽は望めないのです。
 苦難を乗り越える味方は冷静さ以外の何物でもない。肉を削っても自然の温もりを傍に置き、対話することで自己を磨き続けたい、積極的に花を迎え入れる精神は日本の心そのものだからです。一緒に益々精進したいものです。

                                 専慶流いけばな真樹会主宰 西阪慶眞


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