いくつものトラブルを乗り越えて、打ち上げから7年ぶりに奇跡の帰還を果たした「はやぶさ」は、当時多くの人に感動を与え、子供達に宇宙への大きな夢をもたらした。そして帰還から5年、既に後継機「はやぶさ2」は宇宙空間へ。昨年12 月には、金星探査機「あかつき」の金星軌道投入がトップニュースになった。なんと打ち上げは「はやぶさ」帰還の約1ヶ月前、どれほどの人の記憶に残っていただろう。今回もトラブルの後のラストチャンスに掛けた挑戦での成功が、「あかつき」の存在を多くの人に知らせる要因となったのは言
うまでもない。私達は興味のある物はより深く知ろうと努力するが、興味の無い物、日々の生活とかけ離れている物に対しては無関心…時間に追われる目まぐるしい日々、情報が溢れ過ぎる現代社会の中では仕方がないのかも知れない。余談だが、「あかつき」の計画に投入された資金は250 億円近く?。そんな現状も含め良し悪しに関わらず、より大きな感動や感銘、恐怖に繋がる報道となって初めて人はその事実に目を向ける事になる。
年の初めに敢えて宇宙開発を取り上げたのは、探査活動を実現させる為には、軌道に乗せる事が大前提、無くてはならない要素だと言う事に、人の人生に嵩ねたからだ。レールの敷かれた人生を歩く…人は余り良い意味で捉えない。努力、苦労もなく淡々と進む先に約束された将来がある…と言う短絡的思考からだろう。人は無い物ねだり、ついつい隣の庭の方が良く見えてしまうもの。しかし、見て羨むだけでは何も変わらない。見る、感じる、学ぶ…と云った刺激を元に、現
状からより望む未来へと繋ぐ自分自身の軌道修正は、だれにも可能なはずだと思いたい。将来の夢への道は、決して平坦な物ではないはず。大切なのは現実の中で今自分に出来る事を見つけ出す事、一度のつまずきに全てを諦めるのではなく、
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どう生きれば先に繋がるのか、それがどんなに過酷で遠回りでも、その時点で可能な事と向きあう軌道修正を試みるべきだろう。目標は今を歩く為の道しるべ、軌道修正は自分らしく歩き続ける為の手段ではないだろうか。
あるマラソンランナーの生き様に、人の心の強さを思った。華やかな舞台から一転、癌との戦いに片足切断、車いすでの生活を強いられる。しかし、絶望の中から車椅子でのマラソンに挑戦、今も再発と向き合いながら志はオリンピックへと向かっている。現在へ到る迄の厳しさは他人には想像も出来ない。先に約束された結論なんて無い。それでも壁にぶつかる度、今自分に出来る事を精一杯で向き合う事が、今の自分を、周囲から生かされていると云う現実に応える事に。走ると云う目標は変わらない。その走る道は変わらない、形が違うだけ。ぶつかった壁の前で諦めるのではなく、何度でも軌道修正を試みれば良い。どんなに遠回りをしても、前だけを向いて努力をするだけ。結果はその先に自ずと出てくるもの。努力を
怠らない、ひたすら日々を精一杯に積み重ねる…。目標を持って生きる彼に悲壮感は無い。
新しい年の始まり、この節目の時に今一度、誰もが自分を見つめ直すには良い機会では。他人の綺麗ごとで済ますか、真摯に向き合うのか。せめて自分に厳しくありたいと思う。
華道専慶流 西阪慶眞
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