●2017年9月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞

●花材/サンスベリア・スタッキー、着色桐、スズメウリ、ドラセナ、ヤッコカズラ
●花型/造形(モビール))

●揺れ動くいけばな造形

 




ポイント

花器を天井からぶら下げていける様式がある。釣瓶、船、月、などで、自然への恵みへ感謝の気持ちを反映したものとされている。
現代では立体芸術にとどまらず、三次元世界を目指そうと新しい感覚で取り入れ、床の間を離れた現代空間に
「動」の造形を導きだした。空間にそよぐ些細な風を受け、各部分が微妙に動くことで、次々に形、表情を変えるのが特徴。
ここでは細部のパーツは固定してあるため動かないが、作品全体がゆったり揺れ動く光景はとても穏やかで、心和む。
花器は大津寄花堂作の二連吊り花器を使用。

水揚げ 水切り


●花材/ヒガンバナ、シペラス
●花器/多孔花器


ポイント 
 秋の彼岸に咲くことから彼岸花の名前でも親しまれ、拙宅の庭でも黄色と朱色が重なるように群生。もう何年この花に接し、そして強烈な逞しさにどれだけ励まされてきたことか。その度に室内にも持ち帰り、折々の感情を形にしてきた。すまし顔の1〜2本の姿、それに比して集団をなす大迫力の鮮烈さ。そのどちらの表情も私の中では今なお不完全燃焼。印象、思いが深いだけにテーマもデカくなる一方。
ウチクトウの細い葉を集合させ、花器模様と呼応させ、花器と枯れ素材、ナマ花を一体化させています。

水揚げ 水切り

   
彼岸花

  

個々に抱く願い

  「いつか地球は、昔流行った映画の様にロボットに支配され、人がロボットに使われる時代が来る…」待合室で、隣りに座っていた90才を越える女性の冗談では無い本気の一言。突然発せられた訳は、その日皆さんも耳にしたであろう一つのニュースにあった。中国でAI(人工知能)とAIを会話させたところ、人に認識の出来ない独自の言語で会話をしていたと言うもの。内容が内容だけに、特別気にも掛けなかったと言う人も居るだろう。ただ、仕事や教育現場から遊びに至るまで、更には様々な日常の生活機器等々、近代化したこの文明社会ではあらゆる分野で機械化が進み、それが当然として生活している人々の意識は、間違いなく自分本位。誰もが機器は自分が使うものであり、自分が使われる立場になるなんてあり得ない!と笑うかもしれない。しかし、どうだろう?例えばパソコン、携帯依存症と言う言葉は随分前から使われている。現実に機械を使わずして私達の日々の生活はもう成り立たなくなっている。高齢化社会、この女性の様に昔を知り、今の世界と比較出来るからこそ発せられた危機感ある言葉。果たして、あり得ない!と笑いすませて良いのだろうか。  思い重なる様に、こんなニュースが飛び込んで来た。人体にマイクロチップを埋め込むと言うもの。手をかざすだけで機械が認識するため、手間が省ける、時間の短縮、悪用を避けられる…と。これが既に現実のものになっているのだ。人体に装着しなくても、指輪、リストバンドと言ったものもあるのに…当然、体内に異物を入れた不快感や、体調不良を訴える人も出ていると言うが、いずれはそんな不都合も研究され解消されて行くだろう。総合病院で名前ではなく番号で呼ばれる社会、個人に与えられた公的マイナンバー…。いつか人は皆マイクロチップ装着と云う、ある意味人体改造?で管理される未来が訪れるのだろうか。それは、そんなに遠い先の話では無いのかも…。

SF映画のシナリオが、新たに生きる希望へと繋がって行くラストシーン、人の知恵は留まるところを知らず、必ず現状を越えて行く。しかし、それには想像出来ない程の時間を要するため、私達は今この瞬間の現状認識しか出来ない。挑戦の先に将来どんな社会が作り上げられたとしても、今あるこの現実の中での生活しか無い。進化することの意味、進化に伴う人間に対する負荷…、より良い生活を求めながらどこかで「昔は人が人らしくあって良かった」と云う人の思いがある様に、進化が全ての人に求められているものではない。人はこれまで日々の身近な暮らしから遥か遠くの宇宙開発に至るまで、多くの夢物語を現実に導いて来た。しかし、反面それは競い合う対立社会を作り出し、その先に戦争や核開発と云った恐怖へと繋げて来た負の遺産であることも間違いなく現実である事を忘れてはいけない。  偶然待合室での女性の言葉が耳に届いたのは、どこかで遠い未来にたいして同じ危機感を感じているのかもしれない。

             華道専慶流 西阪慶眞

 


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花模様  専慶流